花巻町の84歳「長寿の秘訣は無理をせぬこと」(昭和6年1月1日)

昭和6年元日付の『岩手日報』には、花巻町の千葉丈之助翁(84歳)が登場する。かつて同紙の記者として筆を執っていた翁は、明治・大正の時代を経て、いまや静かな隠居生活を送っている。

当時の日本人の平均寿命は40代前半。そんな時代において、84歳という年齢は群を抜いた長命であった。記者が翁に長寿の秘訣を尋ねたところ、穏やかな語り口で三つの要点が語られた。

一、無理をせぬこと

二、心を平穏に保つこと

三、睡眠をよくとること

どれも特別なことではない。だが、日々の生活のなかでこれを一貫して守るのは容易ではない。

さらに翁はこうも語っている。若い時分から酒は一滴も飲まず、食事も「食いすぎは毒、腹八分目でよい」として慎ましく暮らしてきたという。暴飲暴食や過労を避け、心穏やかに暮らすこと──それが自然と長寿へとつながったのであろう。

新聞は、この翁の話を新年の紙面に載せることで、読者に静かなる年の初めの戒めを送っているようでもある。

無理せず、静かに、よく眠る。

千葉翁のこの三つの教えは、いまも色褪せることなく、現代に生きる私たちの心にも響いてくる。

 

 


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