花巻町の84歳「長寿の秘訣は無理をせぬこと」(昭和6年1月1日)
1931年1月1日
2025年8月4日
昭和6年元日付の『岩手日報』には、花巻町の千葉丈之助翁(84歳)が登場する。かつて同紙の記者として筆を執っていた翁は、明治・大正の時代を経て、いまや静かな隠居生活を送っている。
当時の日本人の平均寿命は40代前半。そんな時代において、84歳という年齢は群を抜いた長命であった。記者が翁に長寿の秘訣を尋ねたところ、穏やかな語り口で三つの要点が語られた。
一、無理をせぬこと
二、心を平穏に保つこと
三、睡眠をよくとること
どれも特別なことではない。だが、日々の生活のなかでこれを一貫して守るのは容易ではない。
さらに翁はこうも語っている。若い時分から酒は一滴も飲まず、食事も「食いすぎは毒、腹八分目でよい」として慎ましく暮らしてきたという。暴飲暴食や過労を避け、心穏やかに暮らすこと──それが自然と長寿へとつながったのであろう。
新聞は、この翁の話を新年の紙面に載せることで、読者に静かなる年の初めの戒めを送っているようでもある。
無理せず、静かに、よく眠る。
千葉翁のこの三つの教えは、いまも色褪せることなく、現代に生きる私たちの心にも響いてくる。
