前沢の牛馬商殺しが解決(S26.4.5新岩手日報)
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【完結編】前沢・自由党支部長殺害事件が解決―「偽電」で誘い出した犯人の正体と逮捕劇
高飛び寸前の逮捕:犯人は23歳の「札つきの不良」
昭和26年(1951年)3月末に発生し、岩手・宮城両県を震撼させた前沢町(現:奥州市)の鈴木支部長殺害事件は、発生からわずか数日で急展開を迎えました。昭和26年4月5日付の『新岩手日報』は、「鈴木氏謀殺事件解決す」との見出しで、犯人逮捕を報じています。

逮捕されたのは、宮城県出身の芳賀昭(23)。犯人は奪った大金を手に北海道へ高飛びしようと計画していましたが、4月2日、青森県八戸市内で警察官に身柄を確保されました。所持金からは、被害者から奪ったとみられる数万円が発見され、犯行を自供するに至りました。
卑劣な手口:米谷局からの「偽電報」と綿密な計画
取り調べによって明らかになったのは、あまりにも身勝手で計画的な犯行内容でした。芳賀は以前から鈴木氏が多額の現金を扱う「牛馬商」であることを知っており、執拗に狙いを定めていました。
- 「偽電」の利用: 芳賀は、鈴木氏の知人を装い、宮城県の米谷(まいや)郵便局から「良い牛がいる、金を持ってきてくれ」という偽の電報を打ち、鈴木氏をおびき出しました。
- 単独犯行の自供: 当初は共犯者の存在も疑われましたが、芳賀は「一人でやった」と供述。米谷町(現:登米市東和町)付近の山林で鈴木氏を襲い、23万円を強奪したのち、遺体を隠して逃走していました。
動機については、ギャンブルなどで作った借金の返済や遊興費欲しさという、あまりに短絡的なものでした。
実地検証と地域に広がった安堵
紙面には、犯人の芳賀が捜査員に付き添われ、犯行現場となった錦織(にしこおり)村(現:登米市東和町錦織)周辺で実地検証を行う写真も掲載されています。当時の地元住民の関心は非常に高く、現場付近には多くの野次馬が詰めかけた様子が記されています。
被害に遭った鈴木氏の家族は、犯人逮捕の知らせを受け、「せめて父の無念が晴れた」と涙ながらに語り、警察の迅速な捜査に感謝を述べています。
おわりに
「電報」という当時の重要な通信手段を悪用し、誠実な商売人を罠に嵌めたこの事件。昭和26年という戦後混乱期の中、地域のリーダーを失った前沢町の衝撃は計り知れないものでしたが、犯人の逮捕によって事件は一応の終結を迎えました。
古い新聞記事が物語るこの事件は、現代の特殊詐欺にも通じる「信用を逆手に取る」犯罪の恐ろしさを、今も私たちに伝えています。
出典:昭和26年4月5日付 新岩手日報「鈴木氏謀殺事件解決す 偽電で誘い出す」
