水沢で高利貸し夫婦が賭博仲間に殺される(S33.1.29)

昭和33年1月29日、岩手県水沢市田小路で、64歳の家畜商の男性と42歳の同居女性が自宅で惨殺される事件が発生した。現場は水沢警察署から約3キロ離れた木造平屋の住宅で、二人は深夜、寝込みを襲われ、薪のような鈍器で頭部を繰り返し殴られて即死した。室内には物色の形跡が見られたものの、大金や預金通帳はそのまま残されており、物盗りを装った怨恨が動機と推測された。

被害者の男性は、無許可の金貸し業や賭博を生業としており、高利での取立てによって恨まれることが多かった。一方、被害者の女性は片目を失明した過去があり、飲食店勤務や賭博に関与していた経歴があった。

事件の捜査中、水沢市佐倉河地区に住む32歳の農業の男が容疑者として浮上した。この男は被害者宅に頻繁に出入りし、事件当日も昼間に訪れていた。また、被害者男性に多額の借金をしており、厳しい取り立てを受けていたことが確認された。事件当日の夜、男は賭博仲間とともに水沢市内のバー「ユーモア」を訪れていたことが判明した。午後11時過ぎにバーを出た後、男は単独で被害者宅を訪れ、寝ていた二人を薪で殴り殺害したと自供している。バー「ユーモア」は犯行に至る直前の行動の一環として重要視され、男の事件当夜の足取りを明らかにする捜査の手がかりとなった。

さらに、事件直後のこの男の言動には不自然な点が多く、家族や知人に対して「事件当日は早い時間に帰宅した」と証言するよう指示するなどのアリバイ工作を行っていたが、実際には深夜に帰宅していた。また、警察の取り調べでは事件当夜の行動について供述が二転三転し、信憑性に欠けていた。事件翌日には急に多額の現金を所持していたことが確認され、これは犯行後に奪った現金と推測された。さらに、警察官に「お前がやったのではないか」と冗談めかして言われた際には異常に動揺するなど、不審な態度も見せていた。

この男は当初犯行を否認していたが、捜査の進展と物的証拠の突きつけにより最終的に犯行を自供した。供述によれば、男は借金返済に窮し、現金を奪うため深夜に被害者宅を訪れた。寝ていた二人を薪で殴って殺害し、現金や衣類を奪い、借金に関連する証拠を隠蔽しようとした。

裁判では、この男の怨恨と金銭目的が犯行動機と認定され、事件の残虐性が重く見られた。昭和33年4月、裁判所はこの男に死刑を言い渡し、事件は解決を迎えた。この事件は地域社会に大きな衝撃を与え、人々に恐怖と不安を広げた。


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