沢内村の不倫カップルが群馬の山奥で心中(S34.6.9)
昭和34年(1959年)、岩手県和賀郡沢内村猿橋長瀬野(現在の岩手県和賀郡西和賀町)で運転助手として働いていた男は、親戚宅近くに住む既婚女性と親しくなり、不倫関係に発展しました。女性は夫との不和を抱え、男との関係を深めていきました。同年5月19日、女性は岩手県和賀郡湯田村湯本(現在の岩手県和賀郡西和賀町湯本)の美容院で男と再会し、一泊を共にしました。この行動を家族が知り憤慨したため、男は親戚宅を追い出され、女性も夫との別居を余儀なくされ、実兄が住む岩手県和賀郡沢内村(現在の岩手県和賀郡西和賀町)へ戻りました。
その後、女性は男を訪ね、逃避行を提案しました。昭和34年5月27日夜、岩手県横川の堤防で再会した二人は、翌日、女性が家出をしたことを聞いた男が彼女を探し、岩手県盛岡市内の旅館で合流しました。その後、二人は共に青森県青森市に移動し、さらに新潟県新潟市や佐渡島へ渡り、約6日間観光を楽しみました。その後、群馬県北佐久郡軽井沢町へ移動しました。
昭和34年6月8日、二人は群馬県北佐久郡軽井沢町からバスを利用して群馬県吾妻郡長野原町応桑の旅館「山楽荘」に到着しました。この頃から、女性は家に残してきた子どもたちのことを強く案じ、また、持参していた現金がほぼ尽きたことから心中を提案しました。翌6月9日午前、二人は旅館を出発し、群馬県吾妻郡嬬恋村鎌原へ向かいました。同日午後3時半頃、嬬恋村鎌原通称モロヒコ地区の雑木林内で休憩した際、二人は心中を決行することを決めました。
同日午後8時頃、男は女性の承諾を得て、自分のネクタイを用いて彼女の首を絞め、窒息死させました。翌6月10日、男は群馬県長野原警察署に出頭し、自首しました。
昭和34年7月27日、前橋地方裁判所高崎支部は、男が24歳の独身である一方、女性が31歳で既婚者であり二男一女の母であったことを考慮し、不倫関係を続けたことや犯行の責任を重く見ました。しかし、自首した点を情状酌量し、懲役3年の実刑判決を下しました。事件に使用されたネクタイは没収されました。