国見峠保険金殺人(S43.10.12)

 

昭和43年10月12日夜、岩手県岩手郡雫石町橋場付近の国道46号線で、車両が崖下に転落する事故が発生したと盛岡警察署に通報が入った。現場は国見峠から岩手県側に約7キロ下った地点で、崖の高さは約100メートル。車には夫婦が乗車しており、夫が無事で助けを求めた一方、妻は車とともに転落し死亡した。夫の説明では、休憩後に車を動かした際にスリップして崖に転落したとされたが、現場の状況から不自然な点が多く、警察は「交通事故を装った殺人」の疑いを持ち捜査を開始した。

夫婦は秋田市から車で岩手県盛岡市へ向かい、盛岡で一泊した後、観光を楽しみながら秋田市に戻る予定だった。12日午前には小岩井農場を見学し、繋温泉で休憩した後、国道46号線を通り秋田方面へ帰路についていたが、途中で夫の提案により国見峠付近に立ち寄り、事件が発生した。

現場検証によれば、転落地点は広場の崖近くで、路肩が10センチほど高くなっており、通常の操作では簡単に転落しない構造だった。また、夫婦が事件前に国見峠頂上の茶屋を訪れた際、夫が妻に薬を無理やり飲ませる様子が目撃されていた。さらに、夫婦は別居中であり、夫は別の女性と同棲中だったこと、事件の数カ月前に妻名義で高額な生命保険を契約していたことも発覚した。

夫は当初、過失による事故死を主張したが、捜査の結果、保険金を目的とした計画的な殺人だったことが明らかになった。夫の供述によると、峠の崖から車ごと妻を転落させることで殺害を企てたが、犯行に躊躇したため一度現場を離れ、再び戻って実行した。妻には睡眠薬を飲ませて意識を朦朧とさせたうえで、車を操作して崖下に転落させた。

事件は盛岡警察署の合同捜査により解決し、夫は昭和43年10月25日に盛岡地方検察庁へ送致された。翌年2月19日、盛岡地方裁判所にて懲役15年の判決が言い渡され、事件は決着を迎えた。


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