自衛官の轢き逃げ死体遺棄事件(S48.3.18)
昭和48年3月18日、岩手県岩手郡滝沢村一本木(現:滝沢市一本木)の国道282号線付近で、自衛隊員の男性(21歳)が交通事故に遭い、その後遺体が隠蔽される事件が発生した。男性は陸上自衛隊岩手駐屯地戦車大隊に所属しており、当夜、駐屯地正門前の飲食店「美春」で同僚と飲酒後、「自分のアパートに行く」と言い残して午後7時頃に店を出たが、門限の午後10時になっても戻らず行方不明となった。
翌19日、同僚らが盛岡警察署に捜索願を提出。警察と自衛隊が合同で飲食店からアパートまでの範囲を捜索した結果、「美春」から約200メートル離れた国道282号線東側のカラマツ林で、彼の短靴や血痕が発見された。血痕は路肩から林内に点々と続き、物を引きずった形跡も見つかったことから、警察は交通事故による死亡後に遺体が連れ去られたと判断し、捜査を進めた。
21日、現場から約800メートル離れた岩手駐屯地内防衛庁共済住宅に住む一等陸尉(37歳)が所有する乗用車に損傷が見られるとの情報が寄せられた。車を調べたところ、ドアの内側に血痕が付着していたため、この男性に事情を聴取した。彼は当初「土手に衝突した」と否認していたが、自宅の浴室で血だらけの車のマットが洗浄されているのを発見されたことで、一転して事故を認めた。
彼の供述によれば、18日午後7時過ぎ、滝沢村内の国道282号線で対向車のライトに視界を奪われ、歩行中の被害者をはねた。被害者を車に乗せて岩手医科大学附属病院(盛岡市)に向かったが、病院が閉まっており、その場で死亡を確認。恐怖心から遺体を持ち帰り、20日夜、盛岡市内の県立図書館前庭に埋めたという。
警察は21日夜、図書館の植え込み下から遺体を発見し、加害者を業務上過失致死と死体遺棄の容疑で逮捕した。裁判では懲役2年の実刑判決が下され、加害者は事件直後に自衛隊を懲戒免職となった。