Fラン大学生の婦女暴行殺人(S48.5.10)
昭和48年5月10日午前1時半過ぎ、岩手県花巻市一日市の道路上で、女性が顔を殴られ血を流して倒れているとの通報を受け、花巻警察署が出動しました。被害者は花巻信用金庫一日市支店北側の路上で発見され、意識不明のまま花巻総合病院に搬送されましたが、脳挫傷のため同日午前6時50分に死亡しました。被害者は花巻市内のバー「夏」の雇われマダムで、住まいは花巻市内のアパートの22歳女性でした。
事件当夜、被害者は午前0時40分頃に勤務先を閉め、紙袋を持ちながら自宅方向へ向かう姿が目撃されていました。目撃証言によれば、犯行現場では若い男が被害者の顔付近を何かで殴打し、その後北側へ逃走したとされました。犯人の特徴は20~30歳代、身長約170cm、痩せ型、黒っぽい上着を着用していたことが報告されています。
花巻警察署では直ちに「一日市路上殺人事件捜査本部」を設置し、被害者の交友関係、勤務先のトラブル、凶器の特定などを中心に捜査を進めました。しかし、捜査は難航し、現場周辺の目撃情報や証拠が不足していました。
同月28日午後、花巻市末広町の東宝映画劇場内で別の強盗傷人事件が発生し、奥州大学経済学科2年の19歳男子学生が逮捕されました。この事件をきっかけに、一日市の殺人事件との関連が調査されました。逮捕された学生のアリバイは不確実で、犯行当夜の服装や行動が目撃証言と一致したため、警察は容疑を強めました。さらにポリグラフ検査で反応が確認され、6月5日に容疑者は一日市事件の犯行を自供しました。
犯人は、被害者を性的暴行目的で襲い、追いかけた末にコンクリート塊で殴打して死亡させたと供述しました。その後、花巻温泉道路上で車を止めようとしたが失敗し、田んぼ道を通って自宅に戻ったとしています。犯行時に着用していた衣服から血液反応が検出され、物的証拠と供述が一致したことで、容疑者は起訴されました。
犯人は翌年、盛岡地方裁判所で強姦致死と強盗致傷の罪で懲役8年の実刑判決を受け、判決が確定しました。この事件は、花巻市では昭和13年の「明治屋店員殺害事件」以来の凶悪犯罪として広く注目され、警察と市民の協力のもとで解決に至りました。