県民会館で県民による「第九」演奏会(S49.3.2)
1974年3月2日
2025年6月15日
昭和49年3月2日夜、盛岡市の県民会館大ホールで、県民オーケストラと一般公募の「第九を歌う会」によるベートーベン「第九」の演奏会が開かれた。会場は満席となり、合唱団260人、オーケストラ90人による迫力ある演奏は、聴衆に深い感動を与え、「音楽を聴いて初めて涙が出た」といった声も聞かれた。
県民オーケストラは昭和48年4月の県民会館開館記念式典でデビューし、以後定期演奏会を重ねてきた。発足当初から楽器不足や練習会場の確保に苦労しつつも、浜田徳昭氏(明星短大教授)を指揮者に迎えて地道な練習を重ねてきた。
第九の演奏は当初、団員たちにとっては高いハードルであり、計画は一度延期されたが、浜田氏の提案により再始動。合唱団は一般から募集され、260人が参加。ソリストはプロの歌手に加え、アルトは地元の一戸高校教諭・高橋順子さんが急遽抜擢され、個別練習に励んだ。
合唱団とオーケストラはそれぞれ厳しい練習を積み、学生、主婦、公務員から子どもまで幅広い層が参加した。練習会場の確保には事業家の協力があり、県教委からの補助金も出された。
こうして、全国的にも珍しいアマチュアによる「第九」演奏会は、東北初の試みとして大成功を収め、岩手の音楽史に新たな1ページを刻んだ。