田野畑〜普代にシーサイドライン開通(S49.4.1)

昭和49年4月1日、岩手県下閉伊郡田野畑村明戸と普代村太田名部を結ぶ観光有料道路「シーサイドライン」が開通し、同月25日には千田知事らが出席して盛大な開通式が行われた。この道路は、田野畑村北山崎から普代村までの男性的で荒々しい断崖の海岸美を生かし、観光ルートとして整備されたもので、県内では八幡平、小岩井に続く三番目の観光有料道路である。昭和45年に着工し、4年の工期と28億5千万円をかけて完成。延長14.1km、二車線道路には4本のトンネル(総延長958m)と2か所の橋(計113m)があり、断崖を削る難工事が続いた。工事中には地層の化石露出や国立公園内での自然保護問題による一時中断もあったが、最終的に自然保護に配慮した形で予定通り完成した。

愛称「シーサイドライン」は公募で決まり、開通と同時に周辺では田野畑村明戸地区に「ケビンハイツ明戸」(レストラン、キャンプ場など)を建設し、地域活性化が図られた。鳥越・羅賀といった漁村近くに観光拠点を設けることで、就労機会や水産物販売の促進も期待された。また、北山崎にはシャクナゲ群落を持つ絶景地があるため、ここを宿泊拠点として整備し、観光の中核地とした。さらに、山間部に点在していた農林業従事者を北山地区に集団団地化するなど、集落再編成事業も行われた。普代村側でも公共・民間を問わず観光施設の整備が進められた。

この開通により、それまで“空白地帯”だった北部陸中海岸への観光ルートが初めてつながり、南は陸前高田から北は種市町までの海岸線が一つの観光ルートとして機能し始めた。それ以前は観光客が八戸から内陸へ逸れていたが、今では久慈市から田野畑村を通り、海岸線を南北に縦断する長距離観光が可能になった。これは、八幡平の山岳観光、平泉の史跡観光と並び、陸中海岸の海洋観光を加えた「三大観光地ルート」の形成を意味し、岩手観光の新たな柱となった。

一方で、国道4号など主要幹線から有料道路に接続する県道の整備は遅れており、道幅が狭く未舗装で、落石の危険もあるなどの課題が残る。今後、名実ともに陸中海岸随一の観光道路とするためには、接続道路の早急な整備が望まれる。


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