北上信用金庫藤根支店ギャング事件(S44.8.7)

昭和44年8月7日、岩手県和賀郡江釣子村(現・北上市)にある北上信用金庫藤根支店で銀行強盗事件が発生しました。この支店は国道107号線沿いに位置し、東北本線北上駅から西方約10キロの地点にありました。周囲は田園風景が広がる静かな地域で、近隣には藤根町、小学校、村役場、商店などが点在していました。支店の建物は木造2階建てで、事件当時は1階部分のみ使用されていました。

事件が発生したのは午後0時50分頃。3人組の男がピストルを手に藤根支店に乱入し、職員4人を金庫室に閉じ込めた後、現金約150万円を奪って表の入口から逃走しました。犯人たちは、支店西隣の大井商店前に駐車されていたキー付きのコロナ・ライトバンを奪い、その車で逃走。花巻市方向へ向かったとされています。

犯行直後、北上警察署藤根駐在所に被害が通報され、県警本部が緊急配備を発令。岩手県内全域や隣接県にも協力を要請し、特に花巻市や北上市などの周辺地域で捜査が行われました。午後5時過ぎ、犯人たちが使用した車両が花巻市内を流れる豊沢川付近で発見されました。さらに、国道4号線の瀬畑陸橋付近では犯行に関連する遺留品が発見されました。

その日の夜9時頃、花巻市内から一関市方面へ向かうタクシーが検問所で停止され、乗客としていた容疑者が逮捕されました。彼は左頬の傷跡が特徴的で、銀行強盗の犯人と一致する点が確認されました。後の取り調べで彼が他の2人と共に犯行に及んだことが判明します。

共犯者は、主犯格が北海道積丹郡積丹町出身であることが分かり、もう1人は群馬県安中市板鼻出身であることが判明。主犯は犯行現場である藤根支店隣の建設現場で以前働いており、その際に支店の防犯状況を把握していました。この情報をもとに犯行を計画し、共犯者を誘って実行に移したことが明らかになりました。

捜査の結果、1人は熱海や京都に遊興目的で向かい、その後に出頭。もう1人は大阪府高槻市で逮捕されました。最終的に、岩手県警察の迅速な対応と緻密な捜査により事件は解決。昭和44年11月11日、盛岡地裁でそれぞれ懲役5年から6年の判決が下されました。この事件は、平和な田舎町での突然の銀行強盗として注目を集め、警察の初動捜査の重要性を強く示した事例として記録されました。


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