宮古でチンピラが猫虐待に腹を立て殺人(S51.1.17)
昭和51年1月17日未明、岩手県宮古市黒森町の住宅地で、男性が刺殺される事件が発生しました。午前3時半頃、近隣住民が「怒鳴り合う声」を聞き、静かになった後、不安を感じて自宅の窓から確認すると、雪明かりの中で空き地に倒れている人影を発見しました。この空き地は、宮古市中心部の繁華街から北西約2kmに位置し、住宅や舗装道路に囲まれた約250㎡の造成地です。
通報を受けて救急隊員が現場に到着したところ、男性が胸から多量の血を流して仰向けに倒れており、すでに心肺停止状態でした。傷は左胸を貫通する刺創が致命傷で、他にも頭部や脇腹に複数の傷が確認されました。現場には一部の足跡が残されていましたが、凶器や他の証拠品は発見されていませんでした。
捜査本部が宮古警察署に設置され、捜査が進められた結果、被害者は事件の約10日前に宮古市に戻り、黒森町にある空き家の実家で一人暮らしをしていた男性であることが判明しました。事件当夜は繁華街のバーで飲酒した後、自宅に戻る途中で知人宅を訪ね、その際に口論が発生したと見られています。
口論のきっかけは、被害者が深夜に訪ねてきた際、家主の飼い猫を怒って殴ったことでした。家主はこの猫を非常に可愛がっており、その行為に激怒。さらに、被害者が過去に不適切な行動をしていたことを指摘するなど、互いに罵り合う展開となり、「表に出ろ」と言い合った末、空き地での対決に至りました。そこでは口論がさらにエスカレートし、被害者が刃物を取り出して襲いかかると、家主が刃物を奪い返し反撃、複数回刺して被害者を死亡させました。
この事件には、地域の暴力団が深く関与していました。被害者も一時期、暴力団に関わりを持ち、その組員として活動していた経歴がありました。また、犯行に及んだ家主も暴力団の関係者で、事件後に証拠隠滅を依頼した相手も暴力団の幹部でした。具体的には、凶器を捨てた海や衣服を焼却した場所に暴力団の幹部や関係者が関わっており、犯行後の隠蔽工作が組織的に行われました。
捜査の過程で、暴力団関係者の証言や行動が鍵となり、警察は凶器の発見や事件の背景を解明しました。閉伊川河口から発見された凶器や、衣服の焼却現場に残された痕跡が物的証拠として押収されました。
裁判では、主犯が殺人罪で懲役8年、共犯者らが証拠隠滅罪でそれぞれ懲役6カ月と4カ月の判決を受けました。