仙台・藤崎の増築完成大売り出し(S7.11.1岩手日報)
今日ご紹介するのは、昭和七年十一月一日の岩手日報に掲載された、仙台の藤崎百貨店の大きな広告です。藤崎の増築完成大売出しという勢いのある文字が目を引きますが、今から九十数年前の新聞紙面を飾ったこの広告からは、当時の都市文化の華やかさが伝わってきます。
広告によると、十一月三日から五日間にわたって、増築完成を祝う大売り出しが開催されたようです。十一月三日は当時の明治節、現在の文化の日という祝日であり、街がお祝いムードに包まれる時期に合わせた開店だったことがわかります。添えられた挨拶文には、地下一階、地上三階の近代的な店舗が完成したことへの誇りが綴られており、外観や内部の意匠には当時の最新の流行である現代復興式が取り入れられたと記されています。
店内の案内を見ると、当時の百貨店がどのような役割を果たしていたのかがよくわかります。屋上には展望台や遊歩場があり、三階には家具や文房具、玩具などが並んでいました。二階は銘仙や高級着尺といった呉服・和装が中心で、一階には洋品や時計、貴金属、そしてお菓子売り場があったようです。地階には食料品だけでなく、食堂や喫茶も完備されており、まさに一日中楽しめる娯楽の殿堂だったことが伺えます。
特に注目したいのは、広告の中央に描かれたエレベーターの存在です。当時は垂直に移動するエレベーター自体が非常に珍しく、最新設備を備えたデパートへ行くことは、地方の人々にとっても特別な体験だったはずです。広告の下部にはモダンなビルディングのイラストも描かれており、当時の人々の憧れをかき立てる内容になっています。
岩手の新聞にこれほど大規模な広告を出していることからも、藤崎が当時から東北全域を商圏とする重要な拠点であったことがわかります。今も仙台の街で親しまれている藤崎ですが、九十年前のこの日に、新たな歴史の一歩を踏み出したのだと思うと、非常に感慨深いものがあります。
古い新聞広告は、単なる宣伝を超えて、その時代の空気感や人々の暮らしを映し出す貴重な鏡のようです。この一枚の広告から、昭和初期の仙台や岩手の人々が、どのような未来を夢見ていたのか想像が膨らみます。