盛岡中劇・第一劇場で「そよかぜ」公開(S20.10.31新岩手日報)

昭和20年10月31日、盛岡の空に吹いた「そよかぜ」

〜焼け跡に響いた「リンゴの唄」と映画館の紅白模様〜

終戦からわずか2ヶ月半。まだ街に空襲の傷跡が生々しく残る中、人々は何を心の支えにしていたのでしょうか。

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手元にある昭和20年10月31日の「新岩手日報」(現在の岩手日報)の広告。そこには、映画という娯楽が人々に明日への希望を灯していた、当時の盛岡の姿が刻まれていました。


映画館が「紅白」に分かれていた時代

この時代の興行で非常に興味深いのが、映画館が「紅系(べにけい)」「白系(しろけい)」という二つの系統に分かれていたことです。これは戦時中の配給統制から続く仕組みで、系統によって上映される作品が厳格に決まっていました。

盛岡の街でも、それぞれの劇場が「紅」と「白」の役割を担い、市民を迎え入れていました。

【紅系】内丸座

『歌ふ狸御殿』

大映が誇るオペレッタ映画の金字塔。狸の世界を舞台にした華やかなファンタジーは、厳しい現実を忘れさせてくれる魔法のような作品でした。

  • 主な出演者:
  • 高山広子 / 宮城千賀子
  • 草笛美子 / 楠木繁夫 / 伊藤久男

※広告左端には「高山広子・宮城千賀子・草笛美子…」と銀幕スターの名が躍ります。

【白系】中劇・第一劇場

『そよかぜ』

松竹映画が放つ、戦後検閲第1号作品。並木路子さんが歌う挿入歌「リンゴの唄」は、のちに日本中を勇気づける大ヒットとなります。

  • 主な出演者:
  • 並木路子 / 上原謙
  • 佐野周二 / 斎藤達雄

※「新作 そよかぜ」の文字。盛岡の空に新しい時代の風が吹き抜けた瞬間でした。

広告が伝える「盛岡の底力」

新聞紙面は掠れ、文字の並びも右から左へ。しかし、そこには力強く「画映の週今(今週の映画)」という見出しが立っています。

内丸座、中劇(中央映画劇場)、第一劇場。
盛岡の文化を支えてきた劇場の名前が、あの大変な時代に確かに存在し、人々を励ましていたという事実。紅白に分かれた劇場の入り口には、きっとそれぞれの夢を求めて行列ができていたことでしょう。

【編集後記】

今回、昭和20年10月31日という歴史の転換点の資料に触れ、改めてエンターテインメントが持つ「生きる力」を感じました。あの時、岩手の空の下で「リンゴの唄」を口ずさんだ人々に思いを馳せたいと思います。


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