一関市内の呉服店も初売り(S29.1.1岩手日日)

昭和29年元旦の岩手日日に掲載された相川屋の広告には、戦後の混乱から立ち上がり、新しい時代へと向かう当時の暮らしぶりが凝縮されています。まず目を引くのは、商品の分量を表す単位の混在です。和服一着分を基準とする伝統的な反という単位と、ヤード・ポンド法に基づいた碼(ヤール)という単位が同じ紙面に並んでいます。着物用の見切り品が反単位で売られる一方で、カーテンや洋服の材料と思われる綿更紗などは碼単位で表記されており、生活様式が急速に洋風化していった過渡期の様子が読み取れます。

価格表記に注目すると、100.00といったように小数点以下まで記されているのが印象的です。実はこの昭和29年という年は、法改正によって「銭」という通貨単位の流通が公式に停止された直後のタイミングにあたります。前年末をもって現金としての銭は役目を終えていましたが、この広告の丁寧な端数表記からは、長年親しんできた計数習慣や、正確な価格を提示しようとするお店の誠実さが伝わってくるようです。

当時の物価を振り返ると、綿の腰巻が100円、布団用の生地が250円となっており、現代の貨幣価値に換算すれば、お正月の初売りらしい手頃な特売価格だったことが想像されます。100円の買い物ごとに抽選券を配布したり、購入額に関わらず粗品を贈呈したりといった記述からは、お正月を祝う晴れやかな空気感と、商店街に足を運ぶ人々の活気が伝わってきます。

一関市地主町という地名や電話番号の六四番といった記載も、地域に根ざした老舗の誇りを感じさせます。一枚の古い広告に記された単位や数字の並びは、単なる安売りの記録ではなく、日本人が歩んできた和洋折衷の歴史や、時代の変わり目における生活の細かな息遣いを今に伝える貴重な資料と言えるでしょう。


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