岩手県内の日活系映画館で「東京の人」「浴槽の死美人」公開!(S 31.4.25岩手日報)
1956年4月26日
2026年1月1日
昭和31年4月25日付の岩手日報に掲載された日活映画の広告は、当時の映画界の勢いをそのまま映し出しています。
まず、メイン作品である「東京の人」は、ノーベル賞作家・川端康成の連載小説を西河克己監督が映画化した純愛メロドラマです。物語は、月丘夢路演じる美貌の未亡人と、彼女を慕う大学生、そして奔放な娘たちが織りなす複雑な愛の模様を描いています。日活の看板スターだった月丘夢路の気品ある演技に加え、当時二十歳前後だった芦川いづみの瑞々しい清純さが、戦後復興期の東京の風景とともに美しく活写された文芸大作です。
もう一方の併映作「浴槽の死美人」は、野口博志監督が手掛けたスリリングな本格ミステリーです。物語は、黒真珠の密輸に絡む陰謀を背景に、密室である浴槽で発見された美女の全裸死体の謎を追う、当時の日活が得意とした「無国籍アクション」の前身ともいえる娯楽作です。河津清三郎が演じる私立探偵・み志津野一平が、怪しげな秘密結社や妖艶な美女たちの間を潜り抜けながら事件を解決していく展開は、文芸作である「東京の人」とは対照的に、スリルと官能を求める観客を大いに熱狂させました。
これらの作品は、前年末の昭和30年12月に開館したばかりの盛岡日活で先行公開されました。最新鋭の設備を備えた新しい映画館で、川端文学の叙情と、手に汗握る本格ミステリーを同時に楽しめる興行は、当時の岩手の人々にとってこの上ない娯楽だったことでしょう。
翌日からは宮古第一常盤座、釜石錦館、花巻文化、一関日活、水沢日活、高田公友館、大船渡映劇、遠野中央、北上中央といった県内各地の映画館でも順次幕が開き、岩手の街々が映画の熱気に包まれました。