松尾村の行商人殺し事件(S38.4.1)
1963年4月1日
2025年9月19日
昭和38年4月1日、岩手県岩手郡松尾村(現在の八幡平市)で、行商人の女性が殺害される事件が発生しました。当日午前11時頃、小学生2人が津軽街道高川橋付近の川原で遊んでいる最中、県営赤川砂利採取場の休憩小屋近くで頭部や顔面に損傷を負った女性の遺体を発見しました。遺体は、小屋の北側軒下に仰向けで倒れており、マニラロープで緊縛されていました。遺体の身元は、秋田県鹿角郡花輪町(現・鹿角市)の行商人である51歳の女性と確認されました。
現場は、現在の国道282号沿いの高川橋上流約35メートル地点で、周囲は農山村で人家が少なく、津軽街道から15メートルほど川原に入ったところに放置されたリヤカーや自転車の痕跡が発見されました。リヤカーには駄菓子や衣料品などが積まれており、被害者が行商をしていたことが示されていました。
被害者は3月30日午前に岩手松尾駅で目撃された後、松尾村内の各部落(落合、中松尾、上時森、下時森)を回り、午後5時35分の列車で帰る予定でしたが、その後の足取りが途絶えていました。
捜査の結果、松尾村第二十七地割に住む32歳の男性が浮上しました。この男性は生活苦から犯行に及び、被害者を「米で借金を返済する」と誘い出し、高川橋付近で待ち伏せて殺害。現金3万3千円を奪い、その後、飲食店で借金の返済や飲酒に使用していました。犯行当時のシャツに血痕が付着していたことを、容疑者の長男が警察に供述したことが決定的な証拠となり、逮捕に至りました。
容疑者は盛岡地方裁判所で審理され、昭和38年9月30日に無期懲役の判決が言い渡されました。本事件は、行商人の安全が脅かされる農山村での悲劇的な事件として記憶されることとなりました。