国民春闘の岩手県内の状況(S49.5.31)

1974年に行われた「国民春闘」は、賃上げ要求や労働時間短縮、インフレ抑制を中心に大規模な労働争議が全国で展開されたものです。この春闘には約930万人の労働者が参加し、労働組合の80%がこの時期に賃上げ交渉を行いました。春闘共闘委員会は「国民的要求を前面に出す」として「悪性インフレ阻止」をスローガンに掲げ、賃上げ闘争を進めました。4月にはゼネラル・ストライキが行われ、鉄道、バス、郵便、医療、教育など多くの公共サービスが停止し、特に4月1日は全国的に交通網や学校が混乱しました。盛岡では鉄道とバスのストライキにより、通勤・通学に大きな影響が出て、県立病院では外来患者の受け入れが停止されました。教育労組のストライキは非常に高い突入率を記録し、県内の多くの小中学校や高校で自習が行われました。

一方で、県警はストライキを行った岩手教職員組合(岩教組)や県高等学校教職員組合(県高教組)に対して地公法違反の容疑で捜査を開始し、家宅捜索や組合員への事情聴取が行われました。これにより、教育界には大きな波紋が広がり、岩教組委員長が逮捕される事態に発展しました。反弾圧共闘委員会は連日のデモや集会を行い、最終的に委員長は釈放されました。

一方、バス労組の賃上げ交渉は長期化し、4月中には毎週ストライキが行われました。最終的には岩手中央バスで賃上げが合意に達し、ストは終了しましたが、他のバス労組との交渉は5月まで難航しました。

国民春闘の結果、史上最高の賃上げが実現し、労働組合の大半が5月末までに妥結しました。平均で2万3千円以上の賃上げが行われ、前年の実績を大幅に上回る結果となりましたが、企業間の格差も浮き彫りとなりました。同盟加盟の労組でも、前年の約倍の賃上げが実現した一方で、二万円以下の昇給にとどまる組合も多く、賃上げの内訳にはばらつきが見られました。


showa
  • showa

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です