旱魃や豪雪で農作物に被害(S49.3.31)
昭和48年6月下旬から始まった干ばつは、岩手県に大きな被害をもたらした。農作物の被害面積は約4万9800ヘクタール、被害額は約69億6000万円と見積もられ、水稲、牧草、野菜などが特に影響を受けた。被害率はホップが55.3%、牧草47.6%、野菜43.1%と高く、水稲の被害額は約29億7200万円に達した。
この干ばつにより、花巻市では7月1日から断水が始まり、7月25日には農業用水を巡って農民が上水道を遮断する事態となった。農民の要請に対し、市長が協力を懇願し収束したものの、自衛隊の給水車が派遣されるなど深刻な状況が続いた。また、大船渡市や陸前高田市でも水不足が深刻化し、学校給食の停止や水産加工場の操業短縮など生活や産業にも影響が広がった。この干ばつは明治33年以来の規模とされ、8月初めの降雨でようやく収束した。
昭和49年1月には西和賀地方を中心に豪雪が発生し、湯田町や沢内村で住民が孤立する事態となった。積雪は湯田町で3メートルを超え、農業ではリンゴやブドウ、桑の樹体に被害が出た。昭和49年3月31日現在の県農政部のまとめでは、果樹や桑の樹体被害は総体で約553ヘクタール、被害額は約2億2300万円に上った。被害は野ネズミや野ウサギによる食害、雪による折損が原因で、野ネズミは約1億2500万円、野ウサギは約460万円、雪による折損は約9200万円の被害額となった。これらの被害は57市町村に及んだ。
県は緊急対策として、樹体周囲の除雪や倒れ枝の切除、樹勢回復のためのせん定などを指導した。政府は東北や北陸地方の農作物被害に対して天災融資法を適用したが、本県では同法の申請はせず、自作農創設維持資金などの低利融資を活用する方針が取られた。
これらの異常気象を受けて、県は水資源の管理や災害対策の見直しを進める方針を示したが、実現は進んでいない。住民の生活を守る抜本的な対策が求められた。