二百十日は無事に過ぎる(S4.9.2岩手日報)

昭和4年9月2日の『岩手日報』によれば、農家にとって最も恐れられる「二百十日(にひゃくとおか)」——台風の来襲が多い厄日——が、今年は大きな被害もなく無事に過ぎたという。

掲載された写真は、盛岡市梨木町の田んぼの様子と思われる。黄金色にたわわに実った稲が、風にそよぎ、秋の穏やかな陽射しのもとに静かに揺れている。写真の説明には「水田に案山子の浮かんで見えるのも初秋の一趣景」とあり、のどかな収穫前の風景がうかがえる。

岩手県立農事試験場の夏作定期調査の結果も好感触だったようだ。この年の夏は、大暑を過ぎたあたりから8月中旬まで高温が続き、降雨も少なかったため、一時は不作が懸念された。しかし、8月20日ごろから気温が下がり始め、それに伴って降雨も増加。結果として稲作の生育は持ち直し、作況指数は「110前後」と平年より豊作傾向にあると報じられている。

風水害の心配が尽きない東北地方の農家にとって、このような年はまさに“ありがたい秋”であり、自然の恵みに感謝する気持ちがひとしおであったことだろう。

 


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