盛岡市加賀野の田んぼで苗代かき(S2.4.22岩手日報)

昭和2年4月22日の岩手日報に掲載された一枚の写真は、当時の盛岡の日常を鮮やかに切り取っています。

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この日付は日本経済が大きく揺れ動いた昭和金融恐慌の真っ只中であり、高橋是清蔵相が支払猶予令、いわゆるモラトリアムを断行した歴史的な日でもありました。世間が銀行休業のニュースに騒然とする一方で、盛岡の郊外に位置した加賀野では、そんな喧騒とは無縁のような静かな時が流れていました。

写真には「苗代かき」に励む農家の姿が写し出されています。泥に足を取られながらも馬と共に土をならすその光景からは、どんなに中央の政経が混乱しようとも、春が来れば田を耕し種をまくという、地に足のついた人々のたくましい営みが伝わってきます。

かつて見渡す限りの田園地帯だった加賀野は、現在では岩手大学教育学部附属小学校や中学校が建ち並び、閑静な住宅街へと姿を変えました。舗装された道路や住宅が続く現在の風景からは、当時の泥の匂いや馬のいななきを想像することは難しいかもしれません。しかし、私たちが今歩いている街並みの下には、百年前の先人たちが守り抜いてきた日常の積み重ねが確かに息づいています。

時代の荒波の中でも変わらずに続けられてきた季節の作業。その静かな力強さは、一世紀近い時を超えて今の私たちに大切な何かを語りかけているようです。


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