宮城山、照錦が石鳥谷で凱旋興行(S4.9.1岩手日報)

昭和4年(1929年)晩夏、現在の花巻市石鳥谷町に、かつてない熱気が渦巻いていた。地元出身の力士たちによる大相撲の凱旋興行が行われたのである。

この日、石鳥谷に姿を現したのは、当時すでに横綱として君臨していた宮城山福松。その名に「宮城」の字を冠する通り、岩手県和賀郡出身の力士であり、郷土の英雄として大きな人気を誇っていた。

彼は、弟子である小宮城を伴っての登場であった。そしてもう一人、同じく岩手県は花巻出身の関取・照錦(てるにしき)も合流しており、地元色豊かな巡業となった。

この豪華な顔ぶれをひと目見ようと、会場には実に5,000人もの観衆が押し寄せた。まだテレビもなかった時代、実際の土俵で見る力士たちの姿は、まさに村の一大イベントであり、人々にとって誇らしい時間でもあった。

記事の写真には、屋外の仮設土俵を取り囲む群衆の様子が写されており、白い帽子をかぶった観衆が幾重にも波打つように押し寄せている。その熱気は紙面越しにすら伝わってくる。

昭和初期の地方における相撲人気、そして郷土出身力士への敬愛が強く感じられる一枚である。


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