公会堂の松屋デー(S7.11.1岩手日報)
1932年11月1日
2026年1月1日
昭和7年11月1日の岩手日報を開いてみると、現代の新聞とは全く異なる光景が広がっています。なんと、新聞の一面すべてが広告で埋め尽くされているのです。ニュース記事が一つもないこの紙面からは、当時の岩手の人々の熱気や生活の匂いがダイレクトに伝わってきます。
紙面の上半分、一面トップを大きく飾っているのは岩手県公会堂で開催された松屋デーの告知です。松屋といえば当時の流行を牽引した百貨店ですが、広告にはマネキン界の女王である村山文子や、舞踊界の花形である君野静子が来場すると記されています。スターを招いた華やかな即売会の告知とともに、防寒用品やラクダのシャツ、福助足袋といった冬支度の品々が並ぶ様子は、厳しい冬を前にした北国ならではの活気を感じさせます。
中段には地域の病院や地図、自動車の時刻表といった生活に密着した情報が並び、当時の人々の足跡が透けて見えるようです。
そして紙面の最下部でひときわ目を引くのが、クラブ石鹸の大きな広告です。チェック柄のワンピースを着た女の子のイラストと共に、パパも、ママも、そしてアタシも、というコピーが添えられています。中山太陽堂のクラブ石鹸は、当時としては極めてモダンな広告戦略を展開しており、この洗練されたデザインは当時の家族の憧れを象徴するものでした。一番下の枠外に並ぶ家庭洗粉などの商品名も、当時の美容文化を今に伝えています。
一面を埋め尽くすこれらの広告は、単なる宣伝の枠を超えて、当時の人々が何に憧れ、どのように冬を迎えようとしていたのかを克明に記録しています。90年以上前の岩手の日常が、この一枚の紙面に凝縮されています。