下閉伊郡刈屋村で不倫に狂った木こりの娘殺し(S10.7.30)

昭和10年(1935年)7月29日、岩手県下閉伊郡刈屋村(現宮古市刈屋)の弥栄工業株式会社林業部で働いていた新潟県岩船郡関谷村(現村上市関谷)出身の38歳の男が事件を起こしました。この男は昭和3年に妻を亡くし、当時10歳の長女を連れて各地を転々としながら土木作業に従事していましたが、下閉伊郡で仕事を得て、娘とともに林業部の飯場で暮らしていました。その飯場で、林業部飯場頭の内縁の妻と関係を持つようになりました。しかし、同年6月頃、その関係が飯場頭に気づかれ、女性が自らの非を認めて謝罪したことを機に、男を避けるようになりました。

男は女性を諦めることができず、駆け落ちを計画しましたが、娘の存在が女性をためらわせていると考え、7月30日夕方、林業部近くの山林で娘を殺害しました。男は川岸で眠る娘の頭部に石を投げつけて即死させた後、遺体をその場に埋めました。その夜、男は女性の住む家を訪れ、女性が駆け落ちに応じない様子を見て、遺恨から彼女を焼き殺そうと放火を企てました。31日午前0時過ぎ、男は家の出入口に燃えやすい材料を積み重ねて火をつけましたが、近隣住民が早期に火災に気付き消火したため、放火は未遂に終わりました。

その後、男は女性の殺害を計画し、8月初旬に同じ飯場内から猟銃と実弾を盗み出して犯行機会をうかがっていましたが、不審な行動を見咎めた飯場の住人たちに取り押さえられ、刈屋村駐在所に突き出されました。事件は所轄の宮古警察署で取り調べが行われ、男は娘の殺害、放火未遂、猟銃窃盗、女性殺害未遂の計画をすべて自供しました。

この事件は盛岡地方裁判所で審理され、昭和10年11月7日に懲役10年の判決が言い渡されました。


showa
  • showa

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です