一関・新星劇場で「犯罪都市」を公開(S29.1.3岩手日日)

昭和29年1月3日の「岩手日日」をめくっていると、一関の街に流れていた当時の熱気がそのまま立ち上がってくるような、一枚の映画案内に出会いました。一関・新星劇場。この場所はかつて、地元の世嬉の一酒造の倉庫を改修して作られた映画館で、あの中学生時代の井上ひさし氏が切符切りのアルバイトをしていた場所としても知られています。そんな歴史ある劇場の、ちょうど72年前のお正月の興行を伝える貴重な記録です。

画面の半分以上を占める力強い文字で紹介されているのは、アメリカ映画「犯罪都市」です。賭博と酒と女、そして悪徳の不夜城ラスベガスといった、当時の観客の好奇心をこれでもかと煽る言葉が並び、不敵な笑みを浮かべるジェーン・ラッセルのイラストが、大人の娯楽の香りを漂わせています。戦後から少しずつ復興を遂げ、海外への憧れが強かった時代、一関の人々は銀幕の中に映し出される未知の異国情緒に、どれほど胸を熱くしたことでしょうか。

この洋画と並んで上映されていたのが、京マチ子主演の邦画「彼女の特ダネ」でした。資料によるとこの映画の初公開は昭和27年末ですから、昭和29年のお正月には、いわゆる名作選のような形での豪華二本立てとして選ばれたのかもしれません。京マチ子演じる勝ち気な女性カメラマンが、写真嫌いの首相の笑顔を撮るために奮闘するという物語は、新しい時代の女性像を象徴する明るい話題として、お正月の華やかな気分にぴったりだったに違いありません。

広告の左端に記された「5日封切」の文字からは、松の内の喧騒がまだ残る中、次なる話題作を待ち構える劇場の活気が伝わってきます。当時の映画館は、単に映像を観るだけの場所ではなく、日常を忘れて夢の世界に浸ることができる、街で一番の社交場でした。雪深い一関の冬、厚いコートを着込んだ人々が劇場の扉を押し、上映を知らせるブザーの音に心を躍らせたあの日の空気が、この小さな広告の隅々にまで染み込んでいるようです。


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