岩手中央バス輪禍死事故(S36.1.10)

1961年1月10日午後9時2分頃、岩手県盛岡市上田地区の「上田庚申長根」付近で交通事故が発生しました。事故現場は、盛岡市内の「馬町」から「上田競馬場入口」まで続く市道上で、幅員約7.65メートルの未舗装道路です。路面は約5センチの積雪があり、寒さで凍結して滑りやすい状況でした。現場周辺は繁華街ではなく、夜間の通行量も少なく、街灯はなく暗かったため、視界が制限されていました。

事故当時、被告人が運転する乗合バス(岩二あ〇一一九号)は、「競馬場口停留所」で数名の乗客を乗せた後、警笛を鳴らして発進しました。その際、被告人は停留所から約7.3メートル先の道路左側にいた18歳の女性を視認していました。しかし、バスが発進後まもなく、その女性と接触し、女性が左後輪に巻き込まれて転倒。翌1月11日午前1時20分、近くの岩手医科大学附属病院で死亡が確認されました。

裁判所は、この事故に関する被告人の過失について審理しましたが、以下の点が明らかになりました。

・現場の道路状況や交通の閑散さを考慮すると、バスと歩行者が接触する可能性は低く、十分すれ違い可能な幅があった。
・被告人は低速で発進しており、通常の運転注意義務を果たしていた。
・被害者がどのような経緯で車両に接触したのかが証拠から判明せず、左後輪で轢かれたかどうかも不確定である。

これらの理由から、裁判所は被告人に過失があったと断定する証拠が不十分であると判断し、刑事訴訟法第336条に基づき、無罪判決を下しました。


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