北上の「死体なき」嬰児殺し(S38.12.15)

昭和38年12月15日午後9時20分頃、岩手県北上市黒沢尻町内の珊瑚橋で、28歳のタクシー運転手が女性関係のもつれから前妻との間に生まれた長男(生後8か月)を「足手まとい」として北上川に投げ入れ殺害したとされる事件が発生した。遺体は発見されず「死体なき殺人事件」として注目を集めたが、昭和41年3月30日に盛岡地裁で懲役4年の有罪判決が下され、控訴審でも昭和41年7月7日に仙台高裁で控訴が棄却され刑が確定した。

昭和39年1月3日、被疑者の父親が「孫が不明で心配」と北上警察署に相談したことが捜査の端緒となった。被疑者はこれまで複数の女性と関係を持ち、事件当時は別の女性と同棲中だった。前妻との離婚後に長男を引き取るも育児を親に任せきりで、父親としての責任を果たしていなかった。被疑者は「友人に養育を頼んでいる」と供述したが、調査の結果すべて虚偽であることが明らかになった。

警察は、防犯相談を契機に殺人事件の可能性を検討。被疑者に任意同行を求め取り調べを行った。当初、被疑者は虚偽の供述を繰り返していたが、徹底した裏付け捜査によって矛盾が明らかとなり、自供に至った。最終的に被疑者は「北上川に投げた」と述べたものの、遺体の捜索は小舟を使って行われたが、増水や水深の影響で困難を極め、3日間で中止された。

死体が発見されない中、警察は犯行日時や場所の特定、動機の解明、被害者が他に存在しないことの証明、自白の信頼性の立証に注力。被疑者の女性関係や日常行動の徹底した裏付け捜査を行い、状況証拠を積み重ねた。その結果、被疑者の自白と状況証拠が認められ、有罪判決が確定した。


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