岩手プリンス自動車の中古車在庫情報(S41.1.12岩手日報)

昭和41年1月12日の岩手日報に掲載された岩手プリンス自動車株式会社の広告は、当時の地方におけるモータリゼーションの熱気と、今はなき自動車メーカーの息遣いを今に伝える貴重な史料です。

この広告が掲載された1966年は、日本の自動車史において極めて重要な年でした。というのも、技術力に定評のあったプリンス自動車工業が日産自動車と合併した年であり、この紙面は「プリンス」というブランドが独立した輝きを放っていた末期の姿を捉えているからです。

紙面の上部には、大きく口を開けた愛嬌のあるキャラクターと共に、プリンス中古車週報というタイトルが掲げられています。そこには在庫中古車の一例として、そうそうたる名車が並んでいます。当時の最高級車であるプリンスグロリアスーパーの64年式(S41D型)が60万円より、今もなお語り継がれるプリンススカイラインデラックスの64年式(50D型)が45万円よりといった具合です。当時の大卒初任給が2万5000円に満たない時代ですから、中古車といえどもグロリアは現在の感覚で数百万円から一千万円近い価値に相当する、まさに高嶺の花であったことが伺えます。

面白いのは、プリンスの看板を掲げながらも、競合他社であるダットサンブルーバードやトヨペットコロナ、さらにはトヨエースやニッサンジュニアといったトラック類まで幅広く取り扱っている点です。これは当時の地方ディーラーが、メーカーの枠を超えて地域の足や物流を支える総合的な役割を担っていたことを示しています。
また、広告中段にある「地方より御来社の上お買上げの方には交通費及び宿泊費を当社で負担させて頂きます」という記述からは、現代とは比較にならないほど移動が困難だった当時の交通事情が透けて見えます。県内各地から盛岡花巻の営業所へ足を運ぶ客を、文字通り「おもてなし」で迎えていた当時の商習慣には、現代にはない泥臭くも温かい活気を感じずにはいられません。

新営業所の開設情報として記された花巻市上町の所在地や、盛岡市仙北町の本社電話番号がまだ非常に短い桁数であることも、歴史の奥行きを感じさせます。一枚のモノクロ広告ではありますが、ここには60年前の岩手で確かに営まれていた人々の暮らしと、新しい時代への希望が凝縮されています。


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