都南週末処理場問題(S49.2.11)
盛岡地区広域下水道事業の終末処理場建設は、紫波郡都南村東見前地区に計画されていたが、地権者の強い反対により用地取得が困難となっていた。処理場の建設予定地は、肥沃な農地であり、地権者たちは農業経営の破綻や生活基盤の喪失、地域発展の妨げなどを懸念し、強硬に反対していた。地権者たちは「終末処理場建設反対見前地区同盟会」を結成し、鉄パイプのバリケードを築くなどして抵抗の意志を示した。
盛岡市をはじめとする事業者側は、地権者に対して税制優遇措置や就職斡旋などの条件を提示して説得を試みたが、反対派の一部は応じなかったため、最終的に事業者側は県収用委員会に強制収用の申請を行った。収用委員会は和解を促進するための調停委員会を設置し、和解のあっせんを行ったが失敗し、強制収用を認める決定を下した。この決定により、地権者には土地の明け渡しが命じられたが、彼らはこれに対して裁決取り消しを求める訴えを起こし、さらなる対立が続くかに思われた。
その後、盛岡市と都南村議会の仲介により、地権者側も和解に傾き、最終的に4年2月に県知事の立ち会いのもとで和解が成立した。これにより、2年4ヶ月にわたって紛糾していた終末処理場建設をめぐる問題は解決に至った。しかし、事業者側には、和解条件として提示された代替地の確保や公害防止体制の整備、地権者の生活補償、近隣関係の回復措置、事後の苦情処理機関の設置などの義務が課されている。
都南終末処理場は、10年度から5カ年計画で建設が開始される予定で、総事業費は約100億円。第1期工事は25億円の予算で開始され、最終的には18年度までに1日25万トンの処理能力を持つ施設として完成する計画である。人口増加や生活水準の向上に伴い、盛岡市や近郊地域で使用される水や排水が増加しているため、下水処理施設の整備は生活環境を保護するために重要な課題であり、処理場の建設はこの地域全体の衛生環境の改善に貢献することが期待されている。