黒工の教室で殺人(S53.7.4)

昭和53年7月4日、岩手県北上市本石町二丁目にある県立黒沢尻工業高校で殺人事件が発生しました。昼休み中、工業化学科1年生の男子生徒が、2年生20人ほどに囲まれ、「態度が悪い」などと説教を受け、蹴られるなどの暴行を受けていました。その際、男子生徒は護身用として所持していた登山ナイフを取り出し、2年生の男子生徒の胸を刺しました。被害者は心臓を貫通され、大動脈を損傷し、救急搬送中に出血多量で死亡しました。

事件の背景には、6月下旬に加害生徒が登校時に他校である専大北上高校の生徒とトラブルになり、それをきっかけに上級生である2年生に制裁を受けるようになった経緯がありました。7月1日にも教室内で上級生から説教を受け、暴力を振るわれる出来事があり、男子生徒はその後の報復を恐れ、刃渡り約15cmの登山ナイフを護身用に持ち歩くようになったとのことです。

事件当日、3校時終了後、2年生の教室内で男子生徒は再び正座させられ、暴行を受けました。その際、隠し持っていたナイフを取り出し、あとずさりする上級生の胸を突き刺しました。刺された上級生はその場に倒れ、周囲の生徒が加害生徒を取り押さえる間に意識を失いました。事件現場には血痕が広がり、登山ナイフが残されていました。

加害生徒は幼少期に両親と別れ、祖父母に育てられていました。学校生活では目立った問題行動はなく、成績は中位で、友人関係も良好とされていましたが、事件後の調査で暴力の連鎖やナイフの所持が判明し、大きな社会的反響を呼びました。

岩手県警北上署は直ちに捜査に乗り出し、加害生徒を殺人と銃刀法違反で現行犯逮捕しました。また、県教育委員会や学校関係者は事件を受けて緊急会議や研修会を開催し、校内暴力の防止や生徒指導の強化に向けた取り組みを進めました。

本事件は、校内暴力や生徒間トラブルが社会問題として大きく注目される契機となり、家庭や学校の指導体制の見直しが求められました。加害生徒は最終的に家庭裁判所の審判を経て中等少年院に送致されました。


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