新興製作所が会社更生法申請(S61.5.12)

昭和61年5月、岩手県花巻市の新興製作所(資本金24億円)が経営破綻し、盛岡地裁に会社更生法の適用を申請した。負債総額は190億円で、県内史上最大の倒産となった。直接の原因は、主力銀行であった平和相互銀行が住友銀行との合併を前に不良債権の整理に入り、支援を打ち切ったことである。盛岡地裁は異例の早さで6月に更生手続開始を決定し、住友銀行系の人材が再建を担った。

新興製作所は昭和12年に創業され、戦後は花巻に拠点を移し、テレプリンターの先駆けとして「世界のヤムラ」とも称された企業だったが、創業者の死後、経営争いと技術遅れが重なり衰退。合理化により1,256人のうち637人が希望退職し、労組との対立も激化したが、最終的に大幅な人員削減と賃下げを含む再建協定が締結された。

この合理化は、当時の円高不況と重なって県内企業に波紋を広げ、雇用不安が高まった。県や花巻市は対策協議会を設置し、再就職支援に取り組んだが、再就職は困難を極めた。

一方で、負債の多くが平和相銀向けだったため、関連企業への連鎖倒産はほとんどなく済んだ。再建後は事業を縮小・再編し、明電舎系人材のもとで新体制を構築。重点分野を通信機器などに絞り、旧顧客との関係強化を図った。更生計画の提出は当初より延期されたが、再建への努力により、「新興の灯」は辛うじて守られた。


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