岩手県出身者も無傷ではなかった近江絹糸争議(昭和29年7月14日)

近江絹糸争議は、日本の労働運動史上でも有名な事件として今でも語り継がれている。

「近江」というくらいなので、中心は滋賀県であり、全国の事業所でも争議は発生していたが、岩手県に近江絹糸の事業所はなかった。

しかし、岩手県出身者も働いており、全く無関係と言うわけではなかった。

県人負傷

昭和29年7月15日の岩手日報の報じるところでは、岩手県出身者の工員が危篤であると言うのである。

静岡県の富士宮工場では、7月13日に警官隊との乱闘事件があった。

それで、7月14日には、北上市出身の17歳の男子工員が危篤状態に陥ったと言うのである。

14日の15時には、会社から父親宛に「ヤマイオモシ スグオイデマツ イツダレクルカヘンマツ」と言う電報が届いた。

その後、病状が良くなった旨の電報が届いたものの、東京に嫁いでいる娘に工場に行くように手配したと言う。

その頃、当の息子からは以下のような手紙が来ていたと言う。

「今私の会社では、日本中の誰もが知っている大きな問題を巻き起こしている。この工場も半分に分かれてしまって、毎日いざこざが絶えない。自分はゼンセン同盟に加入しないつもりだったが、友達に誘われて入ってしまった。会社を辞めて帰ろうかとも思うが、金もなく毎日思案している。父さん本当に申し訳ない。一生懸命働こうと思ってここに来たのだが、どうしたら良いか迷っている。申し訳ないが500円送金してくれないか」

発狂者続出

岩手県の話ではないが、昭和29年7月13日から14日の岩手日報に報じられているだけでも、工員の中にかなりの発狂者が出ていたようである。

  • 彦根工場では第二組合が大会を開き、第一組合が第二組合のピケを実力で突破して創業に参加すると言う態度について協議した結果、摩擦を避ける方針でここに新組合加入を働きかけることを申し合わせた一方で、3人の女子工員が相次いで発狂した。錯乱状態にあり、水口町内の精神病院に収容することになった。
  • 岐阜県の大垣工場でも、1人の工員が大声で笑い出したので、工場附属病院に収容した。診察の結果、強度の神経衰弱であることがわかった。郷里の熊本県の精神病院に入院させた。
  • 同じ岐阜県の大垣工場の看護婦学校の1年生は、友人と寮で占いをしていたら「病気の母はまもなく死ぬ」と言う占いが出たため、狂乱状態となり目下手当て中。
  • 三重県の津工場では、愛媛県出身の男子工員が、寮で真夜中にレコードをかけたり土足で畳に上がるなどの並外れた行為を重ねるので、診療所で診断の結果、精神分裂症であることがわかった。

 

 

 

 

 

 

 


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