川口の強盗殺人事件(S43.1.17)

昭和43年1月17日午前9時頃、岩手県岩手郡岩手町川口地区で、ある女性が近所の一人暮らしの女性宅を訪ねた際、鍵がかかっていない玄関から中に入り、居室で血を流して倒れている遺体を発見した。この女性は近くの岩手町川口駐在所に駆け込み、警察が現場へ急行した。遺体の状況や室内が物色された形跡から、警察は殺人事件と断定し、岩手警察署に捜査本部を設置した。

現場は岩手町川口地区の国道4号線から東に約450メートル入った山裾の高台に位置し、周囲は山林や畑が広がる人通りの少ない場所だった。被害者の死因は岩手医科大学法医学教室の解剖により脳挫傷と判明。頭部に強い打撃を受けた形跡があり、現場の状況から物取り目的の犯行が疑われた。

捜査の結果、事件当夜に被害者宅を訪ねていた人物として、岩手町江刈内地区に住む26歳の男性が浮上。彼は被害者宅から養子として迎えられていた経緯があり、事件当日の夜に沼宮内タクシー車庫からタクシーで被害者宅近くまで行っていたことが判明した。さらに、この男性が事件翌日に複数の場所で現金を支払っていたことが明らかになり、警察は容疑を固めた。

1月19日午前7時、警察は岩手町江刈内地区の容疑者宅を訪れ、任意同行を求めるとともに家宅捜索を実施。容疑者宅からは計18万円以上の現金が発見され、これは犯行時に盗まれた金額と一致した。さらに、現場で採取された足跡が容疑者の靴底と一致したことも確認された。

容疑者は当初否認していたが、証拠を突きつけられ犯行を自供。1月16日夜、タクシーで被害者宅へ向かい、共に酒を飲んだ後、被害者を酒瓶で殴打して金を奪い、さらに木材で追撃して殺害したことを認めた。盗んだ金は生活費や借金返済に充てられていた。

警察は1月21日、容疑者を強盗殺人罪で検察に送致。その後、盛岡地方裁判所での裁判を経て、昭和44年5月に無期懲役の判決が言い渡され、刑が確定した。


showa
  • showa

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です