松尾村・前森山の事故隠し殺人(S43.8.14)

昭和43年8月14日夜、岩手県岩手郡松尾村の中沢地区公民館で行われた前森山農業協同組合主催の離農送別会に参加した男性が、帰宅しないまま行方不明となりました。男性の妻は夫が戻らないことを不審に思いながらも、恥ずかしさから警察への届出をためらっていましたが、8月18日、農協組合長を通じて岩手警察署松尾駐在所に捜索願を提出。警察は直ちに捜査を開始しました。

男性は松尾村東方の砂防工事現場で作業員として働いており、送別会当日、現場の飯場に残っていた同僚と酒を飲んだ後、送別会会場へ向かっていました。8月19日昼過ぎ、松尾村近くの雑木林で男性の遺体が発見され、遺体の状態や解剖結果から殺人事件として捜査が進められました。

捜査の結果、同僚の作業員が容疑者として浮上。この人物は事件後に飯場を離れ、一関市内の自宅に潜伏していたところを警察が確保しました。容疑者は当初、男性の妻への強姦容疑で身柄を拘束されましたが、その後の取り調べで男性を殺害したことを自供しました。

容疑者の供述によれば、送別会からの帰宅途中、砂利道でバイクを運転中に男性が転落。動揺した容疑者は、男性が息をしていることに気づきながらも「生き返れば事件が発覚する」と恐れ、窒息させました。その後、男性の妻を襲い、逃亡を図りました。

容疑者は岩手県一関市出身で、大船渡市で生まれ育ちました。大船渡中学校卒業後、家業の漁業を手伝っていましたが、若い頃から窃盗を繰り返し、中等少年院に送致された経験があります。その後も横領や窃盗で計3回検挙され、刑務所に収容されました。出所後、土木作業員として働く傍ら、一関市で家庭を持ち妻子と暮らしていましたが、怠惰な性格から家庭生活は徐々に破綻。昭和43年4月から東京での出稼ぎ生活を経て、事件前の8月7日から前森山の砂防工事現場で働いていました。

事件は岩手警察署と岩手県警察本部、さらに一関警察署の協力により短期間で解決。容疑者は殺人および無免許運転の容疑で盛岡地方検察庁に送致され、裁判で懲役13年の刑が言い渡されました。


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