東北新幹線作業員轢死事故(S60.9.11)
1985年9月11日
2025年10月23日
昭和60年9月11日深夜、岩手県矢巾町の南矢巾踏切付近の東北新幹線高架橋上で、保守作業中の作業員が最終電車にはねられる事故が発生しました。現場は東北新幹線の新花巻駅と盛岡駅の間に位置し、東北本線矢巾駅南方約650メートル地点(上野起点485キロ196メートル付近)の高さ15メートルの高架橋上でした。この事故では、作業責任者の重大な過失が原因で、死傷者が出る惨事となりました。
事故当夜、保守工事を請け負った作業員たちは、深夜の「レール面整正」という作業を行うために現場に集合しましたが、最終電車の遅れを確認する手続きを怠り、電車が通過しないと誤信して作業を開始しました。濃霧が立ち込める中、時速230キロで北上する最終電車が突然作業員たちに接近し、衝突を回避できませんでした。この結果、2名が死亡、3名が重軽傷を負い、現場は血痕や破損した作業器具が散乱する惨状となりました。
事故の原因は、作業開始時に義務付けられていた沿線電話機での指令への連絡や、沿線表示器による確認を行わなかったことにありました。作業責任者が安全確認を怠ったため、結果的に作業員が新幹線の直撃を受ける悲劇に繋がりました。
事故後、警察が現場検証と関係者の調査を行い、最終的に作業責任者が業務上過失致死傷および業務上過失往来妨害の罪で盛岡地方裁判所に起訴されました。昭和62年5月、禁錮3年(執行猶予4年)の判決が確定しました。この事故は、前例のない高架橋上での重大事故であり、保守作業の安全管理の徹底と再発防止の重要性が改めて浮き彫りになりました。また、元気に作業に向かった作業員たちが二度と帰らぬ人となったことへの深い哀悼が捧げられました。