官公庁ゼネスト状態(S28.12.3岩手日報)
昭和28年12月3日の岩手日報の紙面状況を詳細に確認すると、これは実態として「官公庁によるゼネスト(総同盟罷業)」と言って差し支えない状態です。

当時の記事には、全官公(全国官公労働組合協議会)による年末攻勢が最高潮に達し、鉄道、通信、現業部門が同時に実力行使に踏み切っている様子が克明に記されています。
まず交通インフラにおいては、国鉄が「遂に貨車も5本運休」という事態に陥っています。盛岡駅では、当局が「業務命令」を発令して職員を強制的に就労させようとしましたが、組合側は賜暇(休暇)の大量申請などで対抗し、貨物輸送が麻痺する事態となりました。
通信部門の混乱も深刻です。電報が34通遅延したほか、郵便局内では「郵便物滞る」と報じられるほど未処理の郵便物が積み上がり、師走の市民生活に直結するインフラが機能不全に陥っていました。
さらに行政や教育の現場においても、岩手県職組や岩手県教職員組合が職場大会を開催するために一斉に職場を離れる動きを見せています。記事には「気乗薄」という表現で、参加人数が100名程度に留まった支部があることも記されていますが、組織全体としてはストライキに準ずる「年末攻勢」の態勢をとっていました。
特筆すべきは、地域の基幹産業である富士製鉄釜石製鉄所の動向です。見出しに「釜石の心臓止る」とある通り、72時間のストライキによって生産活動が全面的に停止しました。ただし、溶鉱炉の火を完全に消してしまうと再起不能になるため、必要最小限の保安要員だけは確保して運転を続けるという、極限状態の中での理性的判断もなされていました。
このように、特定の職種に留まらず、鉄道、郵便、電信、役所、学校、そして地域の巨大工場までもが足並みを揃えて機能を停止、あるいは著しく低下させている状況は、まさに戦後労働運動史における「官公庁ゼネスト」が具現化した状態と言えます。