石油が無いので漁業にもランク付け(S16.9.14新岩手日報)

【歴史秘話】昭和16年9月14日「新岩手日報」を読み解く:戦時下の三陸漁業と食糧統制

真珠湾攻撃のわずか3ヶ月前、昭和16年(1941年)9月14日の「新岩手日報」。そこには、戦時体制へと急速に傾斜していく岩手の緊迫した空気と、食卓を襲う厳しい現実が刻まれていました。

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特に注目すべきは、燃料不足を背景とした岩手県水産課による「魚の格付け」です。当時の人々にとって、魚はもはや嗜好品ではなく、国が管理する「戦略物資」でした。


■ 衝撃の魚種ランク「甲・乙・丙・丁」

当時の燃料(ガソリン・重油)不足により、漁法や重要度に応じて魚が4つのクラスに厳格に分類されました。紙面から読み取れるその詳細は以下の通りです。

区分 対象となる主な魚種・漁法 当時の扱い
甲種 鰮(イワシ)、鮪(マグロ)、真岡鮫(モオカザメ)、幸神目抜(コウジンメヌケ)延縄など 規制下でも特に重要な漁業として維持されるもの。
乙種 タコ、機船底曳、鰹(カツオ)釣、鯖(サバ)、鱈(タラ)、目抜延縄など 消費規定と並行して扱われる一般的な主力漁業。
丙種 突き棒(メカジキ等)、鮪流縄、鱒(マス)、秋刀魚(サンマ)など 規制強化に伴い、供給・操業が減少していくもの。
丁種 曳船曳網、潜水など 配給を完全に停止されるもの。

■ 「お魚の撰り好みは贅沢の沙汰」

「魚の種類を撰(えら)ぶなどは、この時期に不適当と言ふべき事である……」

紙面の見出しには、現代の私たちには信じられないような言葉が並びます。三陸という豊かな海を目の前にしながらも、「好きな魚を食べることはワガママである」と諭される時代でした。

特に、三陸で重宝されるモオカザメコウジンメヌケが「甲種」として最優先されている点に、当時の切実な食糧事情と地域性が色濃く反映されています。脂質が多く、保存性も高いこれらの魚は、国民のスタミナ源として期待されていたのでしょう。

◎ 記事を読んで思うこと

ガソリン一滴が血の一滴と言われた時代。漁師たちは燃料を惜しみ、浅海(沿岸)や淡水での漁に活路を見出そうとしていました。そんな苦境の中でも、記事の最後には「三陸漁場を控える県民に魚を食わせないようなことはしない」という、岩手の誇りと意地が垣間見えます。

今の私たちがスーパーで自由に魚を選べること。それは決して当たり前ではない、平和という土台の上にある幸せなのだと、85年近く前の古新聞が教えてくれているようです。

© 2024 歴史アーカイブブログ / 資料提供:新岩手日報(昭和16年9月14日号)


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