岩手出身の美術教師が帝展で入選(S4.9.2岩手日報)
1929年9月2日
2025年7月29日
昭和4年の帝国美術展覧会(帝展)において、東京府立第一高等女学校(現・東京都立白鷗高校)の美術教師・橋本花子さんが、「七面鳥」と題する作品で新入選を果たした。しかも今回は「折紙付きの特選」として、高い評価を受けたことが紙面で紹介されている。
橋本さんは青森市の出身で、女子美術学校(現・女子美術大学)在学中の大正14年(1925年)にすでに帝展初入選の経験を持つ実力派洋画家。昭和3年に同校高等師範科を卒業し、教職の道に進む一方で、創作活動を続けてきた。
新聞には、彼女が白衣姿で自身の絵の前に立つアトリエの様子が掲載されており、入選作「七面鳥」は、柔らかく印象派的な筆致と清涼感のある色彩で描かれているという。審査員の中には「特選に匹敵する」と評する声もあり、まさにその実力が認められた形だ。
昭和4年6月には、岩手県紫波郡出身の画家・橋本八百二氏と結婚し、夫婦での帝展出品という形でも注目を集めた。二人は後年、八百二氏の郷里である紫波町彦部の高台に並んで眠っている。
教育と芸術の両面で活躍し続けた橋本花子さんは、東北出身の女性として数少ない洋画壇の先駆者であり、その足跡は今なお高く評価されている。