岩手県庁疑獄事件(S5.3.20判決)

昭和4年春、岩手県庁穀物検査所で現金約6,000円が盗まれる事件が発生した。犯人は金庫を盗み、中の現金を持ち去った後、金庫を窓外に捨てて逃走。この事件は内部関係者の犯行と疑われ、県庁関係者を対象に捜査が進められた。

捜査の結果、県庁会計課の職員が不審な豪遊を繰り返していることが判明。彼は遊郭や料亭で頻繁に豪遊し、東京へ出張した際には地元の芸者を連れて行き、三十人以上の芸者を招いて宴会を開いていた。この宴会には高級料理や贅沢な接待が伴い、その費用は当時の金額で数千円に上った。さらに、地元では八幡町や本町の遊郭に頻繁に出入りし、多額の遊興費を費やしていた。

昭和4年4月初旬、職員が東京からの出張を終えて盛岡駅に到着した際、刑事によりその場で逮捕された。捜査当局は、その後も会計課全体を調査し、公金を預金して得た利息や特別会計の資金を私的に流用していた事実を明らかにした。この不正行為は個人だけでなく、会計課内の複数の職員が関与しており、着服した金額は膨大なものとなった。

事件は昭和5年3月20日に判決を迎え、主犯格の職員には懲役1年6か月の実刑判決が下され、共犯者には執行猶予付きの刑が言い渡された。派手な豪遊の様子や県庁全体に及んだ不正の規模は、当時としては前例のない大事件となり、県内外で大きな波紋を呼び起こした。


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