江刈村の殺人放火事件(S9.4.1)
1934年4月1日
2025年8月1日
昭和9年4月1日、岩手県九戸郡江刈村(現岩手郡葛巻町江刈)のある家の物置小屋で火災が発生し、小屋は全焼しました。焼け跡から女性の焼死体が発見され、その後の調査で、その家に住む女性であることが判明しました。
現場は警察署から約40キロメートル離れた寒村にあり、検証と解剖の結果、被害者は頭部に鈍器のようなもので強い打撃を受け、死因は火事による一酸化炭素中毒であると推定されました。犯人は被害者を仮死状態にした後、小屋に閉じ込めて放火し、犯罪を隠蔽しようとしたと考えられました。
被害者の家には火事の前日から九戸郡伊保内村(現九戸村)出身の当時48歳の男性が宿泊していました(明治15年6月20日生まれ)。この男性は職業を持ちながらも住居が定まらず、各地を渡り歩いていました。調査の結果、男性は被害者の娘に関する問題で被害者を脅迫していたことが判明しました。具体的には、被害者の娘が一戸町の貸座敷に養女として入籍していたにもかかわらず、無断で逃げ出して他家に嫁いだことで、養女先に借金が残ったとされ、その返済や代わりの女性を要求していました。男性は、被害者がこれに応じなければ警察に訴えると脅していました。
4月2日、捜査により、この男性が九戸郡伊保内村の実家に潜伏しているところを発見し、逮捕されました。取り調べで、男性は被害者に対する性的要求を拒絶されたことに激怒し、頭部を殴打して昏倒させた後、証拠を隠滅するため小屋に火を放ちました。この火災で被害者は一酸化炭素中毒で死亡しました。
この事件は裁判にかけられ、昭和9年6月30日に盛岡地方裁判所で審理され、犯人に対し懲役15年の判決が下されました。