矢幅駅前に県内一の倉庫が完成(S9.9.1岩手日報)

昭和9年9月1日の岩手日報を開くと、そこには当時の矢巾地域が誇った圧倒的な活気と、世界を見据えた壮大な物語が記録されています。

徳田信用組合と、不動村・煙山村が経営する矢幅信用組合が共同で進めてきた県下一の巨大倉庫が、この日ついに業務を開始しました。この大事業は本春3月から着工されたもので、収穫期を目前に控えたわずか半年足らずの期間で完成に漕ぎ着けています。12000坪という広大な敷地に、16000石を収容する穀倉が整然と立ち並ぶ光景は、まさに東北のサイロと呼ぶにふさわしい威容でした。

当時のこの地域は、水田2500町歩を擁し、生産額は16万石に達する豊かな穀倉地帯でした。そのうち10万俵が外へと出荷されていましたが、その驚くべき行き先は南洋のサイパン、ロタ、テニアンといった島々でした。矢巾の地で育まれた米は、遠く海を越えて南の島々の暮らしを支え、また国内では東北や北海道で旨い酒を醸すための酒造米として高く重用されていたのです。

世界恐慌や冷害という困難な時代背景がありながら、先人たちが本春から情熱を傾けて築き上げたこの拠点は、地域農業の砦となりました。現代の私たちが目にする矢巾の風景の奥には、かつて南洋諸島までその名を轟かせた、世界規模の流通拠点としての誇らしい歴史が息づいています。


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