発狂した父を家族全員で殺す(S9.11.3)
1934年11月3日
2025年8月4日
昭和9年11月13日、岩手県九戸郡久慈町(現久慈市)で、精神病を患い凶暴化した夫に対する家庭内の不安と生活苦に悩んだ妻が、長男と次男と共謀して夫を毒殺する事件が発生しました。事件の発端は、地元医師が死体に疑問を抱き警察に通報したことでした。
亡くなった夫は8月ごろから精神異常を発症し、家族への暴力や夜間徘徊を繰り返し、家族全員が恐怖と生活苦に苦しんでいました。妻は夫の危険性と家庭の存続を考え、まず長男に相談しましたが、長男はすぐには同意せず、最終的に説得されました。その後、次男が軍務から帰郷し、母と兄から事情を説明され共犯に加わりました。
次男は当時、横須賀海軍水雷学校に所属し、一等水兵として水雷学校普通科生に選抜されていました。次男は父の危篤を告げる電報を受けて一時帰郷し、母と兄からの懇願を受け、最終的に犯行に加担することになりました。
11月12日、母子3人は、殺鼠剤「猫イラズ」を混ぜた餅を夫に食べさせ、夫は急激な吐き気と苦痛の末に翌13日早朝に死亡しました。その後の警察の捜査で、殺鼠剤の購入や餅の入手経路が判明し、妻と長男が逮捕されました。次男は現役の海軍軍人だったため軍法会議に送致されました。
裁判では、妻が審理中に病死し、長男には懲役7年の判決が下されました。長男は控訴しましたが、宮城控訴院と大審院でいずれも原判決が支持され、上告は棄却されました。