覆面座談会:盛岡市内の女中の労働環境について(昭和13年8月12日)
1938年8月12日
2022年1月3日
昭和13年8月12日の岩手日報より。
盛岡市内の金持ちの家では女中を欲しがっているが、盛岡職業紹介所では女中の応募がまるでない。
これは職業紹介所の無能ではないか???
職業紹介所長いわく、「そんなのは逆恨みだ。むしろ雇用してる方が待遇が悪いのを反省しろ!」
データとしては以下の通り。(昭和12年7月~13年6月まで)
- 女中の求人数 290人
- 求職票 148人
- 仕事に就いた者 109人
- 昭和13年8月現在まで継続して働いている者 18人
このように長続きしないのである。
それはなぜか?
盛岡職業紹介所は、市内の女中さんを10人集めて座談会を行った。
- 睡眠時間がほしい
女中の仕事は明け方から夜の10時まで。長い時は12時になることもある。
たぶんどこの家でも似たようなものだと思う。
「女中の仕事は楽だ」という人もいるかもしれないが、四六時中主人と顔を突き合わせていないといけないプレッシャーが想像できますか? この点をよく理解してほしい。
夕食の片付けが終わったら自由時間がほしい。
四六時中顔を突き合わせてないといけないんだったら、せめて家族同様に扱ってほしい。
月に1日ぐらいは休暇がほしい。 - 人格を尊重してほしい
女中というとなんだか一段身分が低いように思われてるけど、今は封建制の時代じゃないですよね?立派な労働者ですよね?
職業に貴賤はありませんよね?
家の子供までが「ねえや、ねえや」とか呼び捨てとか・・・
それも新聞読んだり手紙書く時間すらもらえないし・・・
こんな環境で「善良な家政婦」とかありえなくない? - ご飯は充分食べさせてほしい
私たちだって若いからお腹はすく。
充分食べさせてもらえないのがどれだけ苦痛かわかります?
他の家の子だとご飯2杯以上NGとか、子供のお弁当の残りしかもらえないとか、いやそれ人間扱いじゃねーし! - 突然クビとかやめてほしい
雇う時だけ「末永く」とか「嫁に行くまでいてね」とか言って、いざ雇いだしたら1週間か10日ぐらいでグチャグチャ文句言いだして自分から辞めるように仕向けてくる。
そもそも欠点ない人なんてどこにもいない。何か悪いところがあるんだったら指導してくれてもいいと思うんだけど。
どうしても雇えないっていうんだったら職業紹介所にそう言うとか、こっちにも生活あるの分かってほしい。 - そもそも給料払え
これだけこき使う癖に給料は2か月遅れとか3か月遅れとかって子も知ってる。
そりゃ女中なるような子なんて貧乏な家の子ばっかりしかいないわけだよね?
月末にちゃんと払ってもらわないと困るんだけど。
あと、ちゃんとやってる子には給料アップしてもいいと思う。
このような意見が、ちゃんと雇い主である各家に伝わったのかどうか分からないが、このような悪弊は戦後になっても続いたようで、昭和31年には鷹匠小路で商家女中による殺人放火事件まで発生している。