九戸郡晴山村で何もかも思い通りに行かない男が爆発して弟嫁殺し(S22.7.3)

昭和22年7月3日早朝、岩手県九戸郡晴山村(現在の軽米町晴山)で、家族内の縁談問題を巡るトラブルが発端となり、殺傷事件が発生した。当時36歳の男性は幼少期から「愚鈍」(知的能力が低いとされる)と評され、戦時中に北支(中国北部)で従軍し、復員後は実家で農業を営んでいた。戦死した弟の妻(弟嫁)が同居しており、彼女の再婚相手として家族内で男性が候補に挙がっていた。

弟は太平洋戦争で戦死し、遺骨が事件の約1か月前に届いたばかりで、家族は弟嫁の再婚について話し合いを進めていた。しかし弟嫁は男性との縁談を拒否し、別の男性との結婚を希望していた。この縁談の拒絶が男性にとって大きな精神的打撃となり、家族から「冷遇」(疎外)されているという感情を強めた。

事件当日、配給された男子用シャツを巡るやり取りがきっかけで事態は悪化した。男性が兄嫁に「着るものがないからシャツを譲ってほしい」と頼んだところ、兄嫁は「他の用途に使う予定がある」として断った。この言葉を聞いた男性は、自分が家族から排除されていると確信し、激昂した。そして炉端にあった鉈を手に取り、兄嫁に襲いかかった。兄嫁が逃げる途中で弟嫁にも攻撃を加え、彼女を頭部や咽喉部を複数回切りつけて即死させた。その後、兄嫁も追撃されたが、近隣住民に制止され命を取り留めた。

男性はその場で逮捕され、心神耗弱(精神的障害)の状態にあったと認定されたものの、殺人および殺人未遂の罪で懲役15年の判決を受けた。この判決は控訴審でも支持され、刑が確定した。弟の戦死、家族内の縁談問題、さらに配給シャツを巡るトラブルが絡み合い、感情の行き違いが凶行を引き起こしたこの事件は、平穏な村に大きな衝撃を与えた。


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