盛岡駅近くの強盗殺人(S24.12.9)
昭和24年12月7日未明、岩手県盛岡市駅前の木伏地区にある菓子製造業の家で強盗殺人事件が発生しました。50歳の母親が殺害され、14歳の娘が重傷を負う痛ましい事件でした。現場は駅前派出所からほど近い場所で、事件発生の報告を受けた警察が迅速に駆け付け、捜査を開始しました。
事件の背景には、戦後の混乱の中での職場での不祥事が関係していました。犯人である21歳の男性は、かつて盛岡駅の荷物係として働いており、荷扱い手の仕事をしていました。この仕事では、駅の小荷物の取り扱いを担当していましたが、同僚と共謀して小荷物の窃盗を行ったことが発覚。昭和24年5月に懲戒免職となり、さらに20万円以上の賠償金を負うことになりました。職を失った後、犯人は一定の職に就けず、実家の下宿業を手伝いながら生活していました。
事件の当日、犯人はかつての同僚である男性店員を訪ね、菓子店の2階で酒を飲んでいました。夜11時ごろ、店員が酔い潰れて眠った後、犯人は帰るふりをして再び戻り、金品を盗む目的で家に侵入しました。母親が物音に気付いて目を覚まし、叫び声を上げたため、犯人は持っていた短刀で母親を刺しました。その後、玄関付近まで逃げた母親を追いかけ、複数回刺して殺害しました。その騒ぎを聞いて駆け付けた娘も刺されましたが、奇跡的に一命を取り留めました。
事件後、被害者の証言をもとに犯人が特定され、盛岡市内の自宅で逮捕されました。犯人は戦後の混乱や賠償金の重圧から逃れるため、金銭目的で犯行に及んだことを自供しました。
裁判では、昭和25年12月21日に盛岡地方裁判所で死刑判決が言い渡されましたが、控訴審の仙台高等裁判所では、昭和26年12月25日に無期懲役へ減刑されました。この事件は、戦後の社会不安や若者の無軌道さが招いた悲劇として語り継がれています。