ある老母虐待に関する噂話(昭和29年1月6日)
1954年1月6日
2022年5月10日
昭和29年1月6日の岩手日日より。
「世相の窓」と言うシリーズものの囲み記事なのだが、もはやこれはもう単なる町の噂ではないかと言う下世話なものが載っている。
あるところで、長男が老いた母を虐待死させてしまったのだと言う。
年老いて体が不自由になった老いた母に、満足な面倒を見ず、部屋に軟禁して食事すら与えなかったのだと言う。
しかし、この母も負けてはいない。
長男の命を結んで、近所に不満をぶちまけて世間の同情を引こうと大いに宣伝活動を行ったのだと言う。
そしてそれは息子たちに知れ渡ると、また虐待されると言う悪循環。
結局、老いた母は非業のうちに死んでしまった。
このことで、長男は周囲からの批判にさらされることになってしまった。
一体全体、なぜ長男はこのような挙に出たのか。
この老いた母は、昔から長男よりも下の子供を可愛がっていたのだと言う。
かわいいあまり、多くの金をかけ、大学まで出してやったのだと言う。
そして、さあ今度は下の子に面倒みてもらおうと思った矢先、その下の子はポックリと死んでしまったのだと言う。
そう思ったら、今度は娘に婿を迎えることにした。
しかし、その婿も家には居着かなかったのである。
結局、目にもかけなかった長男に養ってもらわなければいけないことになった。
しかし、これまでの仕打ちを考えると、長男が母をよく思うはずがない。
それで、冒頭のような虐待事案になったと言うことであった。
記事では、「煎じ詰めれば、自ら掘った墓穴であり法律上の罪は乗れるとしても人生の生き方としては落第の部類に入ると言われても仕方がないだろう」と結んでいる。