盛岡・国際劇場で「トプカピ」「アイドルを探せ」を公開(S40.4.5岩手日報)
昭和40年(1965年)4月6日、盛岡市の映画館「国際劇場(国劇)」では、洋画ファン必見の2本立てが上映されました。アメリカの犯罪サスペンス映画『トプカピ』と、フランスの青春音楽映画『アイドルを探せ』。
当時の新聞広告には「明6日大公開!」の文字が大きく踊り、地方都市にも確かに“世界の映画”が届いていたことを今に伝えています。
トプカピ(Topkapi)
劇場公開日(日本):1964年12月18日
製作国:アメリカ
配給:ユナイテッド・アーチスツ
監督・製作:ジュールス・ダッシン
脚本:モンヤ・ダニシェフスキー(原作:エリック・アンブラー『真昼の翳』)
撮影:アンリ・アルカン
音楽:マノス・ハジダキス
出演:メリナ・メルクーリ、マクシミリアン・シェル、ピーター・ユスティノフ、ロバート・モーレイ、エイキム・タミロフほか
受賞:第37回アカデミー賞 助演男優賞(ピーター・ユスティノフ)
あらすじ:
イスタンブールのトプカピ宮殿に展示されている「サルタンの宝剣」に魅せられた女盗賊エリザベスは、恋人のウォルターとともに盗難計画を企てる。仲間に加えられたのは発明好きの貴族、怪力男、身軽な青年など個性派ばかり。計画は綿密だったが、無関係な観光客シンプソンがトラブルに巻き込まれ、警察のスパイとして彼らに接近することに。やがて祭りの日、彼らは屋根からのワイヤー潜入を敢行するが、思わぬ伏兵が事件の行方を左右していく。
本作は、精密な計画とユーモアが交差する“コミカル・サスペンス”として高い評価を得ており、後年のスパイ映画や潜入劇にも影響を与えたとされる作品です。
アイドルを探せ(Cherchez l’idole)
劇場公開日(日本):1964年11月21日
製作国:フランス
配給:日本ヘラルド映画
監督:ミシェル・ボワロン
脚本:リシャール・バルデュッシ
音楽:ジョルジュ・ガルヴァランツ
撮影:レイモン・ルモワニュ
出演:シルヴィ・ヴァルタン、ミレーヌ・ドモンジョ、ジョニー・アリディ、シャルル・アズナヴール、フランク・フェルナンデル、ダニー・サヴァル、ベルデ・グランバル、レ・サーフス(いずれも本人役含む)
あらすじ:
紛失した一粒のダイヤをめぐり、関係者たちが右往左往するドタバタ劇。物語はシンプルながらも、当時のフランスの人気アイドルたちが続々と本人役で登場し、ストーリー以上に“観る楽しさ”を演出する青春音楽映画です。主演のシルヴィ・ヴァルタンは、この映画をきっかけに日本でも大ブレイク。ジョニー・アリディやアズナヴールらも出演し、1960年代のフランス・ポップスの魅力が凝縮されています。
盛岡・国劇の思い出
「国際劇場」は盛岡市紺屋町にあった映画館で、洋画専門館として多くの観客に親しまれていました。ポスターの貼られた外壁、切符売り場のにぎわい、パンフレットを手にした若者たち──映画館はまさに“異国と出会う場”だったのです。
おわりに
1965年の春、盛岡のスクリーンに並んだ2つの映画は、異なるジャンルながらも「世界のどこか」と「青春のきらめき」を伝えてくれるものでした。洋画がまばゆかった時代、映画館が街の文化だった時代。その記憶は、今も静かに息づいています。