一日一食みなとパンを!(S42.11.13岩手東海新聞)

昭和42年11月13日の岩手東海新聞に掲載された、釜石市の「みなと食品工業株式会社」の広告は、時代を象徴するようなインパクトある紙面である。

キャッチコピーはこうだ——

「秋がおなかにやってきた 一日一食みなとパンをお奨めします!!」

この一文だけでも、食糧事情と栄養改善の両立を目指す戦後日本の空気が漂ってくる。そして、下段には「パン食によるデータの一例です」として、学校給食での成果が紹介されている。

たとえば沼津市の学校給食(パン食)では、導入前と導入後で子どもたちの身長や体重が大きく伸びており、体重は平均28kgから31kgへ、身長は133cmから134cmへと増加したという。

さらにこの広告では、経済的な面でも「一日一食パン食」を推している。労働者の昼食を例に取ると──
• パン食:30円
• 麺類:80円
• 米飯:150円

この価格比較からも、「安くて栄養がある」パン食の優位性を強調している。パンにはカルシウム、ビタミン、鉄分が強化されており、「栄養過剰より栄養不足が問題だ」として、パンによる栄養改善を真剣に訴えている。

広告主は、釜石市甲子町に本社を置く「みなと食品工業株式会社」。右上には「みなとパン」と描かれた社屋と配送車が写っており、従業員数60名、販売区域は釜石市内全域に及んでいた。

「一日一食みなとパン」——
これは単なる宣伝ではなく、地域の栄養改善と生活向上に貢献したいという、企業の社会的な願いが込められたスローガンだった。昭和の空腹を埋めたパンの記憶が、ここにある。


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