第77回臨時帝国議会(決戦議会)を終わって県選出議員の所感

この時期、日中戦争のさなかであったが、アメリカが日本から満州や中国戦線から手を引かせようとしていた。
これを日本は「アジアのやっていることに欧米列強が首を突っ込んできた。どうせアメリカだって同じことをしようとしているくせに」と国民全体に不満が鬱屈していた。

第77回臨時帝国議会は「決戦議会」と呼ばれた歴史的な議会である。
席上で東条英機首相は施政方針演説を行っている。

 

昭和16年11月22日の岩手日報には、その第77回臨時議会を終えた岩手県選出の議員のコメントを取っている。

  • 志賀和多利(立憲政友会)
    • 東條首相は気迫と言い理論と言い、時局下における大宰相として同じ岩手県人として誇らしい。
      もし東條首相が壇上で示した如き表れを見るなら大宰相として申し分ない。
      いかにこれを宣伝ではなく実行に移せるか。今後の首相の態度をしばらく見たい。
      19日にはワシントンでアメリカと我が国の代表で第2回の会合が行われているだろう。
      それはそれとして我が帝国の進むべき道は、「帝国の軍備万全なりと確信する今日」日を置かずして実行に移す日が来るだろう。
  • 泉国三郎(立憲政友会)
    • 第77回帝国議会は大きな歴史的役割をはたして幕を閉じた。
      政府の盤石の決意を全世界にたたきつけ、東條首相の施政方針演説に呼応して一億国民の決死の覚悟を示し、未曽有の民族興亡の危機から乾坤一擲の跳躍を試みたのだ。
      だが、帰って考えると議会人の体制が完全なものかと言えばそうではないと思う。
      翼賛同盟の計画が進んでいるようだが、これは弱体ぶりを示している。このままでは次の通常議会に臨むことなどできない。
      (※昭和15年の大政翼賛会の発足により、帝国議会の中にも「翼賛議員同盟」が発足したが、貴族院の反発など必ずしもうまく行っていなかった)
  • 松川昌蔵(立憲政友会)
    • 第77回臨時議会は定刻の毅然たる態度と国民の不抜の決意を内外に示すことができた。
      これで帝国は臨戦態勢から決戦体制になるのだ。
      ここに議会の意思を鮮明にして、戦いの突端が率直に述べられたのは心強い。
      翼賛議員連盟としては、組織力で今後の議会をどのように円満に運営していけるか、それが課題である。
  • 高橋寿太郎(立憲民政党)
    • 今回の臨戦議会は烈々たる意気を示した緊張した議会であったが、苦々しい議員の言動もあった。
      もし翼賛議員同盟が偉大なる政治家によって指導されたならば、むやみに多数で押し切ることをせず、他の会派に対しても度量を示し、決議案説明でも会派を超えて最適任者に当たらせることができたのではないか。
      そうすれば「全議員一心」の新体制にふさわしい結束もできただろうに。
  • 八角三郎(立憲政友会)
    • 葉隠には「武士道といふは死ぬことと見つけたり」ということがある。
      今度の臨時議会では。非常時局で死ぬということを見つけ得ざるを得ない状況。
      これをはっきりと外に示さないといけない。
      それが私の感想の全部。

 

少なくとも新聞で表れている限りでは、アメリカやイギリスのアジアへの干渉に対し「もう日本は戦争するしかない」という雰囲気になっていたことが見て取れる。

 

 


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