戦時下のチャグチャグ馬っコ(S18.6.8新岩手日報)

「鉄蹄に米英撃滅誓って」――昭和18年、戦時下のチャグチャグ馬っコ

岩手の初夏を告げる伝統行事、「チャグチャグ馬っコ」。色鮮やかな装束と、のどかな鈴の音を思い浮かべる方が多いと思いますが、その歴史の中には、今では想像もつかないほど「戦時色」に塗りつぶされた時代がありました。

Screenshot

今回ご紹介するのは、昭和18年(1943年)6月8日付の岩手日報(夕刊)の記事です。前日の6月7日に行われた行事の様子が報じられていますが、その内容は極めて峻烈なものでした。


■ 紙面から読み解く「勇躍進軍」

記事の見出しには、現代の私たちには衝撃的な言葉が並んでいます。

「鉄蹄に米英撃滅誓って」
「チャグチャグ馬ツコは勇躍進軍」

本来、愛馬の息災を願う伝統行事ですが、この年は「戦没軍馬の冥福」「出征戦友の武運長久」を祈願する場へと変貌していました。

  • ・軍馬としての誇り: 記事では、馬たちが「鉄蹄(てってい)」を響かせ、米英を打ち倒す決意を持って進軍しているかのように描写されています。
  • ・銃後の献身: 同じ紙面には、東磐井養蚕組合が兵隊さんへ真綿を献納したニュースもあり、地域一体となって戦争へ協力する空気が色濃く反映されています。
  • ・戦意高揚の映画会: 盛岡市公会堂では『天晴に輝く興亜の馬事大会』などの映画が上映され、娯楽さえも「興亜(アジアの繁栄)」という国策に結びつけられていました。

歴史の音に耳を澄ませて

写真に映る、正装した馬とそれを見守る群衆。彼らが「チャグチャグ」という鈴の音に託したのは、単なる勝利の誓いだったのでしょうか。それとも、戦地へ送られた家族や愛馬への、切実な「生きていてほしい」という願いだったのでしょうか。

昭和18年は、戦況が厳しさを増していた時期です。華やかな装束の裏側に隠された、当時の人々の緊張感と祈りが、この一枚の新聞紙面から痛いほど伝わってきます。

今の私たちが、平和な空の下でこの伝統を純粋に楽しめることの尊さを、改めて噛みしめたいと感じる記録です。

※この記事は、昭和18年6月8日付 岩手日報夕刊の資料に基づき作成しました。


showa
  • showa

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です