上郷村の強盗「金をくれ 金がなければ 米をくれ」(S25.2.26)

昭和25年2月26日、岩手県上閉伊郡上郷村(現在の遠野市上郷)で農婦が殺害される事件が発生しました。被害者は同村内の細越に住む42歳の女性で、当日午前9時頃、籾を搗いて白米にした約三斗を背負い帰宅途中、県道(現在の国道283号線)上に架かる佐生田橋で浮浪者風の男に遭遇しました。この橋は人通りが少なく、男は「金をくれ、金がなければ米をくれ」と繰り返し要求しました。女性が無視して立ち去ろうとしたところ、男が執拗に行く手を阻みました。

その後、男とのやり取りの中で女性は橋桁から約3メートル下の川原に転落。さらに男は女性を襲い、口と鼻を塞ぎ抵抗を封じ、仮死状態となった女性を橋脚近くの水辺に運び、柳の根元で水深約47センチの場所に突き落としました。その後、女性が背負っていた南京袋入りの白米を奪い、現場を離れました。

同日夜、被害者の帰宅が遅いことを不審に思った家族と村人が捜索を開始。翌27日午前11時頃、佐生田橋付近を探索していた住民が橋の下で女性の遺体を発見しました。遺体は柳の木の根元の水中に倒れており、その上には柴やごみがかけられ、さらに雪が薄く積もっていました。近くには南京袋などの遺留品が残されていました。

検視と解剖の結果、死因は溺死であることが判明し、外部からの力による他殺と推定されました。捜査の結果、事件直後に仙人峠駅前で白米を売却した浮浪者風の男が重要な手がかりとなり、この男が事件発生直前に遠野町の職業安定所を訪れた埼玉県北足立郡草加町大字立野堀(現在の草加市)の出身である40歳前後の男性であると特定されました。男は事件後、行方をくらましていました。

昭和31年4月26日、東京都中央区にある日本橋白木屋デパートの工事現場で、資材を盗み出そうとしていた男が警察に逮捕されました。この男は工事現場で発生した資材の窃盗事件で現行犯逮捕されたもので、身元を調べたところ、岩手県遠野警察署が強盗殺人容疑で指名手配していた犯人であることが判明しました。

遠野警察署での取調べにより、この男は昭和25年に発生した農婦殺害事件で被害者を溺死させ、白米を奪ったことを自供しました。男は事件後6年以上にわたり逃亡生活を続けていましたが、盛岡地方裁判所の公判で懲役15年の判決を受けました。


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